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世界最大の「mstdn.jp」を立ち上げた大学院生“ぬるかるさん”は一体何者か その素顔とドワンゴ入社が決まるまでの10日間に迫る(2/7 ページ)

ネット上で急速に注目を集める新SNS「Mastodon」(マストドン)。日本で注目を集める要因となった“ファーストインパクト”は、ある大学院生が自宅のサーバに立ち上げた日本向けインスタンスだった。彼の人生は約10日間で劇的に変わった。

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「mstdn.jp」立ち上げのきっかけは

──ぬるかるさんがマストドンの存在を知ったのはいつころでしょうか。

ぬるかる Twitterのタイムラインを見ていたら、アスキーの遠藤諭さんが書いた記事が流れてきました。内容を見たら、マストドンは分散型とあって、「GNU social」(グニューソーシャル)のパクリぽいなぁと思っていた。GitHubを見たらどちらも互換性があると書いてあったので、良い機会だしサーバも部屋に転がってるし立ててみようかなと。

 (GNU social:マストドンの仕組みに近い別のオープンソースSNS。こちらはあまり注目されなかった。マストドンと互換性がある)

 (GitHub:ソフトウェア開発支援用の大手Webサービス。オープンソースではデファクトスタンダードである)

──アニメ「けものフレンズ」の影響があったなんて話もありましたが。

 (けものフレンズ:女の子の姿になった動物たちの冒険を描くメディアミックス作品。1月にはアニメも放送され、「わーい!」「たのしー!」「すごーい!」などのせりふとともに、奥深いストーリーがネット上で話題になった。以下、けもフレ)

ぬるかる アスキーの記事をシェアしていたのが、けもフレの影響でフォローしていた人というのがまず1つ。そして、けもフレに影響されて読んだ動物分類学の本にマストドンが載っていたというのも理由です。

──分類学の本を読もうと思ったのはなぜですか。

ぬるかる けもフレが流行ると、みんなが動物に関する知識をつけて負けちゃうのではという危機感を覚えたので、「知識をつけねば」と図書館で大量の本を読んでいました。そこで読んだ分類学の本にマストドンが出てきて、生物の存在は知っていたのです。(SNSの)マストドンが気になったのもそれが要因ですかね。

 実は前々から動物というか、キツネが好きでいろいろ調べていたことがありました。けもフレがはやりだして、いろいろな考察が既に出始めていましたよね。だから(自分で考察などをするのは)今更感がありました。

──なぜ、いち早くマストドンのインスタンスを立ち上げようと思ったのですか。

 (編集部注:ぬるかるさんは、初期にドメイン名「mastodon.nil.nu」でインスタンスを立ち上げ、周囲のアドバイスから「mstdn.jp」を立ち上げ直した)

ぬるかる 誰かに使ってほしくて、ほんとに気軽な感じで取りあえず立ててみました。

ぬるかる父 こづかい稼ぎのつもりだったんじゃないの?

ぬるかる 僕は稼ぎとかを全く考えずに、単純に面白いなと思って設置しました。自宅サーバをもともと動かしていたからコストが増えるものでも、もうかるものでもない。ところが、使ってくれている人たちが「お金払えば(サーバを)増強できるんじゃないか」みたいな話になって、どんどん「寄付させてくれ」という話が出てきた。仕方なく最初はメールアドレスを公開しました。

──mstdn.jpを運営するぬるかるさんを支援する動きが広がり、月額制支援サイトのEntyやAmazonの欲しいものリストで寄付するユーザーも増えました。

ぬるかる お茶が(筑波のアパートに)240リットル分届いて、ヤマトさんがうなり声をあげながら運んでくれました。寄付に関しては消極的で、Amazonギフト券ぐらいなら気軽に受け取れるかなと思ったら、あまりにも送られすぎて、「このコード入力したっけ?」ってどんどんごちゃごちゃに……。大量のメールに(ギフト券のコードが)埋もれるのも怖いということで、Entyに移行しましたが、そうしたら大変なことに。

 (Enty:クリエイターの支援募集サイト)

──100万円を1人で寄付する人が現れてびっくりしましたね。

ぬるかる (インスタンスをクラウド化する際に利用した)さくらインターネットに100万円投資したのを小じゃれた感じで言っただけなのかなと思っていたら、その翌日にEntyの寄付金額の桁が増えてて、「えっ! 何これ!」って。Entyは月額で寄付できるシステムですが、100万円の人はどうやら一括で支払うのを特例で認めさせたようです。

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Entyの寄付ページ。現在は新規受け付けを終了している

ぬるかる父 逆に怖いなって。

ぬるかる 気を付けたほうがいいよと言ってくれる人が周囲にいたので、その人にアドバイスを受けたりとか。

──扶養が外れない程度に、といった話もありました。

ぬるかる父 私は定年しているので、実は扶養とかは関係ありません。「定年でお金はきついよ」って言っていたから、(ぬるかるが)そんなものをはじめたのかと思っていた。

ぬるかる母 あの子はお金に関して本当に疎い。そっちのほうが私は心配で、「使わないで全部こっちによこしなさい、貯金しといてあげるから」って(笑)。

ぬるかる 取りあえず寄付されたお金は、絶対に必要なツールだと思った「iPad Pro」の購入以外は使わずにいます。領収書もしっかり取っています。

──iPad Proは何に使う?

ぬるかる 会社に入ったときに、ドキュメントを読んだりメモを取るのにも使えそうです。仕事用途以外では落書きにも。マストドンが意図せず盛り上がる前は、1日4時間ぐらい絵を描いたりしてました。今は時間がなくなってしまって描けてないです……。

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ぬるかるさんは「まだしっかり寄付をしてくれた方々にお礼できていないので……」と言いながらも、活用中のiPad Proを見せてくれた

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