中身のないコップなのに、水やビー玉の存在感――“触覚系VRデバイス”開発の狙い:ニコニコ超会議2017
空のコップの中にビー玉や水が入っているかのように感じるデバイスが、ニコニコ超会議2017に出展されていた。開発の狙いは。
映像を見ながら、何も入っていないプラスチックコップを持つと、中にビー玉や水が入っているように感じる――そんなデモンストレーションが、ドワンゴのイベント「ニコニコ超会議2017」(4月29〜30日、千葉・幕張メッセ)に出展されていた。コップの底にスピーカーを取り付け、振動を再現する仕組みだ。
開発したのは、シン・ショッカソンという同人サークル。コップにビー玉や水を入れたときの映像、振動、音をあらかじめ収録し、振動と音を出すスピーカーをコップの底に装着。ユーザーが映像を見ながらコップを握ると、まるでビー玉や水が入っているかのように錯覚するという「触覚系VR(仮想現実)デバイス」だ。
記者が体験したところ、実際には水が注がれていないはずなのに、握っているコップが重くなったように感じた。さらにコップを逆さまに持つと、こぼれるのではないかと奇妙な感覚を味わった。
開発者の竹内伸さんは「振動だけで重くなる効果はないのに、脳が勝手に情報を補完している。リアルを全て再現するのではなく、鍵となる情報だけを再現すれば他の部分を補えるというのが、VRの本質」と話す。
「プラスチックコップは、触覚デバイスとして革命的」(竹内さん)とも。軽くて持ちやすい上に、ほとんどの人が使ったことがあるため「誰もがもともと体験している分、錯覚を起こしやすい」という。
「触覚はビジネス化が難しい」 技術者の苦難
「触覚を使ったデバイスは、どこへ持っていても『すごい』と言われるが、体験せずに見てもらうだけでは伝わりにくい。ビジネスに持ち込むことが難しい」――個人で触覚の研究を続けている竹内さんは、そう苦悩を語る。
だが「一昔前のVRもそうだった」と竹内さん。2016年は、PlayStation VR、Oculus Riftなどのデバイスが登場し「VR元年」と呼ばれるほどVR技術が話題に。ゲーム以外にも、医療や作業現場など、さまざまな分野でVR技術の普及が進んでいる。
竹内さんは「企業や大学の研究者ではない個人たちが、OculusなどのVR機器を面白がって、情報を共有しながら草の根的にコンテンツを作成したことが、VRのムーブメントに影響を与えた」と指摘。同様のことが触覚の技術でも起きると考え、啓蒙活動を続けているという。
同じ悩みを抱える技術者と「ショッカソン」(触覚とハッカソンの合成語)というサークルを立ち上げた。ニコニコ超会議などでユーザーが体験できる場を増やしつつ、1人ではなくコミュニティーとして技術を開発し、売り込んでいる。
「触覚デバイスはそのままVRデバイスと組み合わせるだけで臨場感が増す。認知を高め、技術者仲間を増やすことで、初めて普及のスタートラインに立てる」(竹内さん)
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