「家族にこのデバイスを使いたいという人々から、Instagram、Twitter、LinkedInに多くのメッセージが来ている。私はこれを前進させる方法を見つけ出したい」──米Microsoftは5月10日(現地時間)、年次開発者会議「Build 2017」の基調講演で、パーキンソン病患者の筆記を補助するウェアラブルデバイス開発の取り組みを紹介した。
特注のウェアラブルデバイスを装着した女性は公開された動画の中で、思い通りに文字や図を書けるようになった姿を見せた。
パーキンソン病患者の生活をアシストする腕時計型のデバイス「Emma Watch」(エマ・ウォッチ)を開発したのは、英Microsoft Research(MSR)のカイエン・チャンさん(イノベーションディレクター)。MSRは、コンピュータサイエンスやソフトウェア工学に関する基礎研究などを行う同社の専門機関で、米、英、中、インドなど世界6カ所に拠点を設けている。
Emma Watchは、パーキンソン病患者が抱える症状の1つ「手の震え」によって阻害される「筆記能力」を取り戻すことを目的としたデバイス。内蔵の小型モーターを振動させ、あえて患者の腕を揺すり、手の震えを相殺する仕組みだ。あらかじめ患者の手の震えパターンを学習させれば利用でき、コントロールは連携したスマートデバイスから行うという。
成果はすでに現れている。グラフィックデザイナーのエマ・ロートンさんはパーキンソン病を2013年に発症。手の震えから直線などを書くことが難しくなり、仕事を続けることは厳しいと考えていたという。Build 2017で公開された動画の中で、彼女はデバイスを使った感想を次のように話す。
「完全な直線を描くことはまだできませんが、これでまた仕事に戻れるかもしれません」(ロートンさん)
開発者のカイエンさんは、自身がこの技術を製品化する計画はないとしているが、他の研究者がこのプロジェクトに参加することを望んでいるという。
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