「ゲームはゼロから作るものではない」 「キャンディークラッシュ」生みの親が語る“開発のコツ”
「キャンディークラッシュ」の開発者であるレゾリューションゲームスのトミー・パームCEOが、東京サンドボックスで「ゲームデザイン」について講演した。
都内各所で開催中のインディーゲームの祭典「東京サンドボックス 2017」(5月10日〜14日)で、スマホゲーム「キャンディークラッシュ」の生みの親でもあるレゾリューションゲームスのトミー・パームCEOが登壇。「開発者から見るモバイルゲームとVR(仮想現実)の違い」について、自身の経験を交えて語った。
1986年から趣味でゲームプログラミングを始め、14年間にわたりスマホゲームを開発。今はVRゲームの開発に精を出すパームCEOは、「モバイルとVRは全く違うものだ」とした上で、両者の特徴を話す。
「誰でもスマホを持っている」ことの強さ
パーム氏が挙げるスマホゲームの特徴は3つ。パームCEOはそれぞれ以下のように説明する。
- アクセシビリティー:ゲームへのアクセスのしやすさ。今は誰もがスマホを持っている時代。基本無料のアプリなら誰もが気軽に遊ぶことができる。
- ソーシャル:人間は社交的な動物。他の人と遊ぶことを楽しいと感じる。それはスマホゲームでも同じだ。
- サービスとしてのゲーム:スマホゲーム業界は競争が激しい。大手パブリッシャーが提供するものも増えてきたので、新しく作ってもその中に埋もれてしまう可能性がある。
VRは「2回目の体験」が重要
一方、VRについては2つの特徴を挙げる。
- 五感を生かす:視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚を生かせる。今のVRは視覚と聴覚については大きく発展しているといえる。
- 2回目の体験が重要:初めてVRを体験した人はみんな驚き、感動してくれる。問題は、2回目を体験してもらえるかどうか。特にVR酔いを経験した人はVR体験を避けるようになる。
ゲーム開発のコツは「ゼロから作らないこと」
50タイトル近いゲームを手がけてきた経験を踏まえ、パームCEOは「ゲーム開発のコツはゼロから作らないこと」と話す。
「ゲームは簡単に作れるものではない。既に世に出てヒットしているゲームのナンバー2を出すというやり方がいいと思う」。
その他、「なるべく少ないチームで開発した方がいいものができる」「ゲームを人に体験してもらうときは余計な説明をせず、生の感想をしっかりと聞くこと」など、持論を展開。「良いゲームを作ることは、人間の脳を理解することもである。ゲーム作りはとても複雑であると同時に、とても楽しいものだ」と、その難しさと楽しさを伝えた。
VRはまだもうからない
まだ学生だった頃、絶対もうかると思って学校を辞め、モバイルゲーム開発にいそしんだというパームCEO。しかし、「iPhoneが普及するまでの10年間は、モバイルゲーム開発は全くお金になりませんでした」と振り返る。
「VRもモバイルゲームの初期と同じで、まだお金にするのは難しい」としながらも、今後VRが普及すればビジネスの可能性はあると踏んでいる。「ようやくVRの時代が来た。長い人類の歴史の中で、活版印刷やインターネットなどの発明がコミュニケーションの革命を起こしてきたが、VRとAR(拡張現実)はその全てを覆すような存在だ」と、VRの今後に期待を寄せる。
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