人工知能(AI)技術を使い、昭和前半の大相撲の白黒映像をカラー化したものを、NHKが「大相撲中継」(5月21日放送)内で放送した。客席の賑わいや千秋楽の取り組みがカラー化され、「当時の様子を身近に感じられる映像になっている」という。
NHKが持っている1941年大相撲夏場所の白黒映像をカラー化した作品。NHKアートとAIベンチャーのRidge-i(東京都千代田区)が共同制作した。
制作では、人間が着色した数枚程度のカラーフレーム例をAIに学習させ、大相撲の白黒映像に「狙った色を自動着色させた」(NHKアート)。AIがカラー化した映像を、人間が最後に修正し、カラー映像を完成させたという。
Ridge-iによれば、従来の手法だと、AIが手本とする学習データが数百万枚ほど必要だった。今回は人間が着色したフレームを大量に用意することが難しかったため、数枚程度の手本データで効率よく学習する手法を開発し、取り入れたという。例えば、力士がおじぎをする前の「開始時」のフレームのみを人間が着色し、その後のおじぎをする動きのフレームはAIが追従して着色するようにした。
制作過程では、人とAIの作業分担のバランスを考慮した。その結果「放送品質を維持しながら、全体の作業工程を大幅に削減しつつ、人はデザインコンセプト作りなどに集中する体制を作れた」(Ridge-i)としている。
完成した映像は、NHKのWebサイトで6月11日午前0時まで閲覧できる。
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