検索
ニュース

品川女子学院が英語の自主学習に「AI」導入 その狙いは?(1/2 ページ)

iPadやクラウドサービスなど、IT技術を積極的に導入している品川女子学院。今度は、長期休暇時における英語の自主学習対策にAI英会話アプリを導入するという。その狙いはどこにあるのだろうか。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 品川女子学院(東京都品川区、以下「品女」)は、ITを活用した教育に学校を挙げて取り組んでいることで知られている。そんな品女が、夏休み中の英語の自習教材としてジョイズ(東京都渋谷区)のAI英会話アプリ「テラトーク」を試験導入することになった。

 なぜ、AIを使った自主学習を検討するに至ったのだろうか。

テラトークを試す高等部の生徒
テラトークを試す高等部の生徒

テラトークは英検対策を視野に入れた課題で活用

 テラトークはコースごとに「リスニング」「ドリル(演習)」「会話レッスン」を行えることが特徴だ。AIは「音声再生」と「音声認識」の2点で活用している。

動画が取得できませんでした
テラトークの使い方

 品女では、「英語検定(英検)」や「TEAP(アカデミック英語能力判定試験)」を想定したスピーキング課題の一環としてテラトークを試験導入する予定だ。今回の試験導入説明会では、英検2級(高校卒業程度)の2次試験(面接試験)対策用コースを実際に品女の生徒が体験した。

必須課題の計画推奨課題の計画 品川女子学院が試験導入で出す予定の課題。あくまで予定なので変更となる可能性もある
英検2級対策のコース
試験導入の説明会では、実際に生徒が「英検2級 面接対策」というコースを体験した
ドリル画面(発音)ドリル画面(意味) ドリルでは、試問で出てくる単語の発音や意味を学習できる。発音はAIでの分析しており、直すべき部分を赤色で表示してくれる

 英検の2次試験にあるパッセージ音読とそれに対する質問、イラストの状況説明をする課題に取り組む様子を見ていたところ、単語の認識精度はおおむね良好であることが確認できた。ただし、「see」と「sea」といった同一発音の単語の検出に若干難があるようだった。現在のテラトークでは同一発音の単語を文脈で判断して表示し分ける機能には対応していないようだ。今後、AIに文脈把握機能が付けば、英語自習ツールとして一歩抜きん出た存在になれるだろう。

イラストの状況説明
イラストの状況説明問題に挑む高校1年生の生徒。音声認識はおおむね良好だが、同発音の単語の検出に難があるようだった

2014年から始まったICT教育への模索

竹内啓悟教諭
竹内啓悟教諭

 冒頭に述べた通り、品女はITを積極的に教育に取り入れている。それに本腰を入れ始めたのは2014年度だ。

 「1人1台のiPad」を目標に定め、翌2015年度には高等部(高校課程)において1人1台体制を実現した。今年度(2017年度)からは中等部(中学校課程)でもiPadの導入を開始。2019年度までには全学年で1人1台体制となる予定だ。

 中学生が使うiPadは「MDM(モバイルデバイス管理)」で利用制限をかけているため、自由にアプリをインストールできないようになっている。一方で、高校生が使うiPadには一切の利用制限を掛けていない。学年(年齢)によって身についている、あるいは身につけるべきリテラシーが異なるからだ。

 クラウドツールは当初「Evernote」「Google Drive」「サイボウズLive」の3種類を主に使っていたが、2016年度にEvernoteでやっていたことをGoogle Driveに統合して現在に至っている。

ICT教育の沿革
品川女子学院のICT教育の沿革
iPadにインストールしているソフト
現時点で生徒用iPadにインストールされているアプリ。この他に教師が指定するアプリをインストールすることもあるが、中学生用iPadについては担当教員が端末管理をしているため勝手にアプリを追加できないようになっている

 日常的な連絡はもちろん、授業資料の共有、クラブ活動など、学校生活のありとあらゆる場面でこれらのツールは欠かせないものになっている。自作の解説動画をGoogle Driveにアップロードしたり、Google Formを使って小テストを作成したりと、生徒だけではなく教員もこれらのツールを活用しているという。

黒板を撮影して写真にさらに書き込み摸擬起業でもGoogle Docsを活用 高校1年生(4年生)で行う「模擬起業」の授業ではiPadとGoogle Driveを活用。議論の過程や資料をクラスで共有できる体制を作っている
数学教師が作成した解説動画生物教師が作成した小テスト 授業の解説動画を自作しGoogle Driveで共有したり(写真=左)、Google Formを使って小テストをオンライン化したり(写真=右)と、教師もクラウドツールを活用している

 品女の情報科主任でICT教育推進委員長の竹内啓悟教諭は「時代に適応すること」と「成長の幅を広げること」が同校のICT教育の狙いであると語る。生徒を取り巻くICT環境は日々変化を続けている。学校としてもその変化をしっかりと受け止め、「(大人より)はるかに先を生きている」(竹内教諭)生徒の成長につながる環境作りに取り組んでいるとのことだ。

ICT教育の狙い
品女のICT教育の狙い
将来像
時の流れによって必要なツールは変わっていく。2019年度までに全学年でiPadを利用する予定ではあるが、さらに先はどうなるか分からない
高校生の制作課題
「ポスターと映像を作る」という漠然とした課題を高校1年生に出したところ、教師も知らないアプリを使ってクオリティの高い映像作品を作る生徒がいた。品女のICT教育の狙いがうまく働いた一例といえる
       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る