Appleが中国にiCloud用データセンターを開設へ ユーザーのプライバシーは守られる?(2/2 ページ)
クラウドストレージに関する中国の新しい法律に対応するというのだが……。
それでもAppleには中国政府の規則に従う、強い経済的動機がある。何しろ今や中国は北米と欧州に次いで世界で3番目に大きい市場であり、あらゆる兆候が、今後中国がさらに大きな利益を生み出すプロフィットセンターとなることを示唆している。中国は現在、Appleの売上高の約20%を占めている。
中国政府の保有企業と提携するからといって、ユーザーのプライバシーが損なわれることはない——。Appleは中国のユーザーにそう訴えている。「皆さんもご存知のように、当社はユーザーのプライバシーとセキュリティを保護するための強固な体制を築いており、当社のいかなるシステムにもバックドアを仕掛けられる隙はない」とAppleは声明で述べている。
さらにAppleは、ユーザーが日常的にiCloudアカウントに保存しているデータを保護するためのセキュリティキーは引き続きAppleが管理するとも述べている。
だが専門家は、このデータセンターの開設によって、中国政府は法的請求やその他の手段を用いてユーザー情報を引き出しやすくなる、との見方を示す。
中国当局が裁判所を通じ、狙いをつけたiCloudアカウントへのアクセスを命じてきた場合、Appleが抵抗するのは今後さらに難しくなるだろう——。米国のデジタル著作権保護団体である電子フロンティア財団(EFF、Electronic Frontier Foundation)のプライバシー専門の上級弁護士ネイト・カルドーゾ氏はそう指摘する。現行の手順では、中国政府はこうした要求を米国の裁判所に通す必要があり、難しい交渉が必要だ。
カルドーゾ氏は中国本土のAppleユーザーに対し、自分の情報を当局の詮索から守るためにiPhoneなどのデバイスでiCloud機能をオフにするよう奨励している。
デバイス本体に保存されたデータは、ユーザー本人しか知らないパスワードを使ってロックしている限り、今後も安全だ。政府がデバイスを押収したとしても、Appleはロックを解除するキーを持たない。ただしiCloudに関しては、Appleがキーを持つ。「iCloudキーチェーン」で同期しているパスワードとクレジットカード情報は例外だ。
データセキュリティ企業Veraのアジェイ・アロラCEOはさらに、Appleが中国政府の保有企業と提携することによって、今後当局がiCloudアカウントを秘密裡に調べる可能性が高まるとの懸念を示す。
「Appleはキツネに鶏小屋の番をさせようとしているようなものだ」とアロラ氏は語る。
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