「ソフトウェアに本気で取り組むのなら、自分でハードウェアを作るべきだ」
アラン・ケイのこの言葉は、現在エコシステムを構築しているGAFAと呼ばれるITの主力企業たち全てに当てはまる。ネット検索企業のGoogleはAndroidを作り、スティーブ・ジョブズはこの言葉を何度も引用してAppleのDNAに組み込んでいるし、FacebookはOculus Riftを手に入れ、AmazonはKindleを作り、そしてEchoで大成功を収めている。
メッセージング企業としてスタートしたLINEはAI技術Clovaを背景に、Echoに代表されるスマートスピーカーとして国内初の「WAVE」を投入。7月14日に製品版より5000円安い1万円で先行体験版の予約販売を開始。「自分でハードを作る」真剣さを見せた。
ぼくもそうなのだが、周囲の目利きの人たちがこぞってWAVEを予約している。最初の半年は成功しているとは言い難いLINE MUSICしか使えず、その後に何ができるかは未知数であるにもかかわらず。それは脳裏にアラン・ケイの言葉がちらついていたからかもしれない。
アラン・ケイがこの名言を話したのは今から35年前、1982年7月20日の「Creative Think」と題したセミナー。これを聞いていた初代Macintoshチームの偉大なプログラマー、アンディー・ハーツフェルドによるメモ書きが、彼が主宰するFolklore.orgに残されていた。
しかし、Apple黎明期のエピソードを描いたこのサイトは現在稼働しておらず、Internet ArchiveのWayback Machineで読むしかない。
※:執筆時点ではアクセス不能だったのだが、7月17日にはサイトが復帰しているのが確認できた。リンクはこちら。
その中からいくつか気になる文章を抜き書きする。
- 未来を予測する最良の方法はそれを発明することだ(初出は1971年)。
- 人間はファンタジーとシェアリングを好む。ファンタジーはより単純で制御しやすい世界へのニーズを満たす。
- みんなコミュニケーションジャンキーなのでシェアリングは重要。そして我々のバンド幅は大きく異なる。
- コンピュータは媒体であり乗り物であり楽器である。
- 全てに合致するような、明瞭で楽しいメタファーを探せ。
- よいアイデアを探せ。よいものではなく、よいアイデアをだ。
- Smalltalkはオブジェクト指向ではなくメッセージ指向にすべきだった。
- コンピュータが環境に埋没することがゴールの1つ。
- コンピュータは全てを知っているように振る舞う必要はない。
- ベターはベストの敵。
- どの視点で物事を見るかはIQで80に相当する価値がある。
- よいアイデアはスケールしない。
そして、この言葉。
People who are really serious about software should make their own hardware.
この名言に先立ち、アラン・ケイは次の前置きをしている。
「覚えておいてほしい。全てはソフトウェアだ。君たちが結晶化するときに必要になるのだ」
「形式よりも中身だ。楽しんでやろう」というアドバイスを最後に残してこの伝説のセミナーは終わったという。
35年を経て、これらの言葉の全てが現在の指標であり続けているのは驚愕でしかない。
7月末から8月にかけてWAVEが日本のアーリーアダプターに届く。それをアラン・ケイの名言に照らし合わせるという過酷なテストをぼくもやってみようと思う。
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