ドイツ発の“AI人事”は何が違う? 企業成長にAIが役立つ理由:“日本が知らない”海外のIT(2/2 ページ)
会社の人事をAI(人工知能)が行う時代。ドイツ発のスタートアップ「Bunch」は、企業の「カルチャー」を分析する。
カルチャーとは「特定の行動を促進する社会的制御システム」のこと。適応性の高いカルチャーがある組織は、リスク許容度が大きく、新しいことへの挑戦を促し、イノベーションを実現できる可能性が高い。また、個人がイニシアチブを取り、意思決定と実行が速く、ユニークなビジネス機会を探し出す能力が高い。
このような組織は結果として、そうでない組織に比べ、収益性、時価総額、社員満足度などで好ましい結果につながっているという。
適応性の高いカルチャーの最たる例が、さまざまなビジネス領域に事業を拡大している米Amazonだ。オライリー教授によると、Amazonのカルチャーは非中央集権的な意思決定が可能で、コアビジネス以外にも果敢に挑戦するリスク許容度の高さが特徴という。
変化の速い現在のビジネス環境で生き残るには、適応性の高いカルチャーを醸成することが重要なのだ。一方で、これは多くの企業が実現できていない課題でもある。
特に大企業の場合、既存ビジネスの拡大に執着してしまい、結果主義のカルチャーが強くなりがちだ。結果主義が強くなると、既存ビジネスをいかに効率良く拡大していくのかにフォーカスしてしまう。そうなると、リスク許容度が下がり、イノベーションが起こりにくい事態に陥ってしまうのだという。
適切なカルチャーが醸成されているか否かは、企業が長期的に成長できるかどうかを左右することになる。カルチャーと業績には強い結び付きがあるのだ。
企業の経営幹部たちはこのことに気付いているのだろうか。オライリー教授は、経営幹部の大半はビジネスの成功にカルチャーが重要な役割を果たすと気付いているが、誰がそのカルチャーをマネジメントするのかが明確になっておらず、それがカルチャー醸成を妨げている要因だと指摘する。
カルチャーマネジメントとは、ビジネスを成功に導くのにふさわしいカルチャーを醸成し、それを維持していくこと。また、ビジネス環境が変わったとき、変化に応じてカルチャーを最適化していくことと考えることができる。
しかし、カルチャーという目に見えないものを扱うのは簡単なことではない。誰がマネジメントするのかという問題のほかに、どのようにマネジメントするのかも非常に重要な問題だ。それが分かれば、そこにどのような人材を充てるのかがイメージしやすくなる。
Bunchは、さまざまな特性を持つメンバーがチームとしてどのようなカルチャーを生み出しているのかを可視化できる。カルチャーマネジメントにどのように取り組んでいけばいいのか、足掛かりとなる示唆を与えてくれるかもしれない。
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