ビットコインまた分岐 新通貨に取引所は疑問視
ビットコインから分岐して、新たな仮想通貨「ビットコインゴールド」が生まれようとしている。取引所は新通貨に対して懐疑的な見方。
ビットコインから分岐し、新たな仮想通貨が生まれようとしている。香港のマイニングファーム、LIGHTNINGASICのジャック・リャオCEOが主導する「ビットコインゴールド」(Bitcoin Gold:単位BTG)だ。
日本時間の10月25日ごろ生まれるビットコインのブロックから分岐すると見られていたが、予定よりブロックの採掘速度が速く、1日早い24日午前10時ごろに該当ブロックに達した。そのタイミングでビットコインの価格は66万円台から62万円台まで下落したが、24日午後4時時点で65万円台まで回復している。なお、ビットコインゴールドのブロックチェーンはまだ稼働しておらず、「マイニングや取引が可能になるのは11月1日以降になる」としている。
ビットコインゴールドの特徴の1つは、取引の合意を取る「コンセンサスアルゴリズム」の方式を、ビットコインが採用していた「SHA256」から「Equihash」に変更したことだ。Equihashは仮想通貨「Zcash」などが採用しているアルゴリズムで、GPUでのマイニングが適している。一部のマイニングファームがビットコインのマイニングに使用している専用機器はEquihashの計算に適さないため、個人のマイニング参加者が増えると見込んでいる。
分岐ブロック時点でビットコインを保有していた人は、保有ビットコインと同量のビットコインゴールドが付与される見込みだが、取り扱い業者からは付与に関して懸念点も指摘されている。仮想通貨取引所大手の米Bittrexは、ビットコインゴールドに関して「完全なコンセンサスコードや、リプレイ攻撃に対する保護の実装、テストと監査のための適切なコードが現状なく、公に知られているコードデベロッパーもいない」と指摘。さらに、ビットコインゴールドのコードを見ると10万BTG分のプライベートなマイニングが開発者によってなされており、コインが取引所に上場されると同時にこれらのBTGが売られる可能性もあると注意を促している。
国内の仮想通貨取引所ではビットバンクが「ビットコインゴールドに限らず、お客さま資産の保全ができない場合や当社の裁量により取り扱いが困難であると判断した場合、付与を行わないことがある」とした上で、「ビットコインゴールドの当初の付与は行わない」としている。一方、国内大手のビットフライヤーは「ビットコインゴールドの分岐が恒久的であり、お客さまの資産保護等の観点においても問題がないと判断した場合」に付与すると表明。付与と同時にビットコインゴールドの売買や預け入れ、送付サービスも開始するとしている。
ビットコインは2017年7月に、ブロックに積める取引量を効率化するルール変更「SegWit」の実装をめぐって、賛成派と反対派が拮抗する「賛否両論フォーク」による“分裂”の恐れがあった。これが起きた場合、ビットコインの取引に支障を来す可能性もあったが、結果的に大きな混乱はなく収束した。その後8月1日には、ブロックサイズを拡大して積める取引量を増やした「ビットコインキャッシュ」が分岐(ハードフォーク)した。ビットコインゴールドの分岐方式はビットコインキャッシュと同様だ。
ビットコインでは11月に「SegWit2x」と呼ばれるハードフォークも予定されている。
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