人間の脳波を読み解くことで、映像を見て感じた内容を、1万個の単語(名詞、動詞、形容詞)で言語化する技術を開発したと、NICT脳情報通信融合研究センターが11月1日に発表した。形容詞に対応したことで、物への“印象”も分かるという。発話や筆談が難しい人が頭の中で考えただけでコミュニケーションできるなど、応用が期待できる。
研究グループは、1万個の単語を“点”とみなし、例えば「犬」と「猫」は近く、「猫」と「建物」は遠く――というように、意味な近さ・遠さを位置関係で表した「言語特徴空間」を作成した。
その上で(1)約2時間の映像を見た被験者がシーンごとに書いた説明文を1万個の単語に言い換え、言語特徴空間に描き入れたもの、(2)別の被験者にも同じ映像を見せて脳波を計測し、現れた脳波同士の関係性を図示したもの――を用意。(1)と(2)を対応付けることで、新たに計測した脳波でも、意味が近しい単語を推定できるようにした。
NICTによれば、これまでも映像を見て感じた物体と動作の内容を、約500単語で推定した例はあった。約20倍の1万単語を使えば、より解釈しやすい言葉で表現できる。また形容詞にも対応したことで、物を見た“印象”も解読が可能になるとしている。
研究成果は、神経科学の国際科学誌「NeuroImage」(電子版)に掲載された。
関連記事
- つらい経験の”怖い記憶”を無意識に消去できる技術 NICTなど開発
「つらい経験」の恐怖記憶を無意識に記憶から消去できる技術を、NICTなどが開発した。 - 脳波で「L」「R」を聞き分ける技術、NICTら開発
NICTと大阪大学らが、脳波を使って英語の発音の違いを可視化する新技術を開発した。 - 脳を活性化する曲、AIで自動作曲 「スーパー日本人」実現に一歩
阪大COI拠点とJSTは、脳を活性化する曲を自動作曲する人工知能を開発したと発表した。 - 脳波がパスワードの代わりになるかもしれない 米研究
特定の言葉に対する脳の反応には個人差があり、“脳認証”が実用化されるかもしれない。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.