情報通信研究機構(NICT)と大阪大学は6月15日、人の脳波を使って英語の発音の違いを可視化する新技術を開発したと発表した。この技術を使うと、英語の「L」と「R」のような日本人の苦手な発音も効果的に聞き分けられるようになるという。
新技術は「Mismatch Negativity」と呼ばれる脳波パターンを利用する。Mismatch Negativitとは、2種類の音の頻度を変えてランダムに聞かせた場合、頻度が低い音を聞いたときに現れる脳波パターンのこと。例えば「light」と「right」をそれぞれ4対1の比率でランダムに聞かせると、「right」と発音されたときにこの脳波パターンが現れる。
Mismatch Negativityは音の違いが大きければ大きく、小さければ小さく出る特徴があることから、新技術ではMismatch Negativityの大きさを「緑色の円」として視覚化。その円をディスプレイに映し、円を大きくするよう指示することで、「L」と「R」の発音の違いを意識しなくても、音を聞き分けられる仕組みだ。
実験参加者は、5日間程度で「light」と「right」の発音が約90%聞き分けられるようになったという。
現段階では「L」と「R」の発音のみ検証しているが、今後は他の類似する発音にも対応する予定。また、今回Mismatch Negativityの大きさを「緑の円の大きさ」で表したが、例えば、レーシングカーのスピードに対応させるなどすれば、学習者はゲームをするだけで英単語の発音を聞き分けられるようになるといった応用もできるとしている。
研究は、NICTと大阪大学が北海道大学と共同で実施した。研究グループは「新しい英語リスニング学習法として社会実装を目指したい」と意気込んでいる。
(太田智美)
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