5Gで変革が起きる!? 「コネクテッドカー」の最先端:特集・ミライのクルマ(2/2 ページ)
「コネクテッドカー」とは何か? 今回は通信機能を装備して、インターネットにつながって人々の生活をより豊かにできる自動車と定義したうえで、その現状を考察してみたい。
交通インフラ系のコネクテッドサービス
コネクテッドカーのサービスは個々の自動車が搭載するものばかりではない。例えばカーシェアリングやパーキングシェアなど都市の交通インフラに関連するものは、国土の狭い日本の都市部を中心にこれからニーズが高まりることも予想できる。先日NTTドコモが提供を始めた「dカーシェア」がその一例だ。
dカーシェアは従来、事業者が提供してきた「カーシェア」と、個人間による「マイカーシェア」、さらに事業者による「レンタカー」の3つのサービスをスマホアプリをプラットフォームにしながら結びつけるユニークな試みだ。ユーザーは3つのサービスに横串を刺しながら、使いたい日時や場所などの条件をスマホから入力して車を探せる。月額固定の利用料金は発生せず、サービス利用ごとの都度課金制としている。「車を貸したい」ユーザーのニーズも吸収できるプラットフォームにするためマーカーシェアも取り込んだところがポイントになると思うが、ドコモではdカーシェアの専用コールセンターを設けてトラブルの発生に万全の構えを取っているという。今後どういう形で活用されるのか注目だ。
トヨタなどが参加するオープンプラットフォームのプロジェクト「SDL」
2017年の1月に、米Ford(フォード)とトヨタを中心に、マツダ、スズキ、スバルなどの自動車メーカーを巻き込んで「スマートデバイスリンク(SDL)コンソーシアム」が設立された。これまで各自動車メーカーが別々に開発してきたコネクテッドカー向けのプラットフォームを1つにつないでユーザー、ドライバーにもっと親しみやすい環境を提供することを目的としたオープンソースプロジェクトだ。
10月下旬に開催された「東京モーターショー2017」では、SDLコンソーシアムに加盟するLINEが独自のAIアシスタント「Clova」(クローバ)を車載向けにチューニングしたバージョンを披露した。クラリオンはSDL対応のナビゲーションシステムを出展。オンキヨーも車載ナビゲーション向けのAIに「声」をカスタマイズするBtoB向けサービスのコンセプトを案していた。それぞれのサービスや製品は、日本国内では2018年以降の投入を目標に置いている。SDLのオープン化のプロジェクトが大きなうねりを作れれば、コネクテッドカーそのものの期待値がいまよりもさらに高まって行くのだろうか。
リビングとクルマをつなぐAIアシスタント
AIスピーカーをフックにして、コネクテッドカーをリビングにつなごうという新しい提案も形を表してきた。三菱自動車の「MITSUBISHI CONNECT」だ。
同社はリビングなど家の中にあるGoogleアシスタント、またはアマゾンのAlexaを搭載するAIスピーカーを使って、ネットワークに接続されているコネクテッドカーを遠隔操作するという新しいサービスを北米市場に展開するための準備に入った。AIスピーカーに話しかけて車のドアの開閉、ヘッドライトを点灯・消灯、15〜29度の範囲でのエアコン設定にエンジンの点火までできるようになるという。
実現できればコネクテッドカーがますます便利になりそうだが、残念ながら三菱自動車では同サービスの日本国内導入については見通しを立てていないという。最大の理由はコネクテッドカーのための通信コストを誰がどのような形で負担するのがベストなのか答えが出ていないから。北米市場では自動車のための多様なテレマティクスサービスが一般に利用されていて、通信費用をオーナーが負担するというマインドが育っているという。対する日本ではコネクテッドカーの普及が遅く、スマホや家庭のインターネットに加えて、エクストラでクルマにもという提案が受け入れられる土壌がないと同社はみているようだ。
一方では2019年後半に次世代高速通信「5G」の商用化が始まると言われている。予定通りにテイクオフすれば、コネクテッドカーそのもの、あるいは周辺の交通インフラがコネクテッドカーを持っていれば快適に使える環境も広がるだろう。都市部では大がかりなスポーツイベントに向けて交通網がさらに整備されるはずなので、その時までにコネクテッドカーの認知が急速に拡大する可能性はある。ダイソンが2020年までに電気自動車の市場への参入を発表したことや、うわさが絶えないアップルのスマートカーなど、人気のブランドが仕掛けてくるかもしれない次の一手が大きなインパクトをもたらす可能性もある。今後も大小様々な話題に注目していく必要がありそうだ。
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