東京メトロは12月17日、地下鉄開通90周年を記念して地下鉄復刻イベント「銀座線タイムスリップ」を実施した。公募に対し、4090人の応募があり、抽選で選ばれた90人が当時の銀座線をイメージした特別仕様車両に乗り、車内に付けられた予備灯が点灯する様子を見たり、車内から銀座線の“幻の駅”とされる「萬世橋駅」「神宮前駅」を見たりした。
特別仕様車両の中は、木目調の壁や銅色に塗装された手すり、涙型のつり革が印象的だった。中でも、報道関係者の目を引いたのが室内予備灯。予備灯とは、車内の照明が瞬間的に消えたときに灯るもの。当時、線路の横にある「サードレール」と呼ばれる場所から電気を取り入れていたため、駅の近くなど線路の分岐点(ポイント)を通過する際などに車両がサードレールから離れ、電気を取り入れられないため一時的にバッテリー電源の予備灯で車内を照らしていたという。実際に体験してみたが、電気が消えるのはカメラのシャッターが切れるかどうかのほんの一瞬だ。
“幻の駅”といわれる銀座線の「萬世橋駅」と「神宮前駅」は、12月1〜18日の期間限定でライトアップされており、速度を落として通過。萬世橋駅(「末広町駅」と「神田駅」の中間に位置)は、1930年1月〜翌31年11月まで仮停車場として使われていた駅で、神田駅の開業に合わせて閉鎖された。一方、神宮前駅(「表参道駅」から「渋谷」方面に約5メートル行ったあたりに位置)は、38年11月に東京高速鉄道「青山六丁目駅」として開業し、翌39年11月に「神宮前駅」に改称。72年の千代田線開業で「明治神宮前駅」が完成したことに伴い、現在の「表参道駅」移行する形で閉鎖となった。
イベントのルートは、上野検車区から上野駅、浅草駅から「引き込み線」と呼ばれる普段入ることのできない車両基地へ、そこから折り返し渋谷へ向かい再び渋谷の引き込み線へ。その後、上野駅まで戻るというルート。約2時間乗っていたが、途中「発車ベルクイズ」や当時の復刻制服を着た乗務員との撮影タイムなどもあり、あっという間に時間は過ぎた。
ちなみに、引き込み線内でスマートフォンをチェックすると、「圏外」の文字が。電波を遮断しなければならない理由があるのだろうかと担当者に質問したが、「普段お客さんが入らない場所なので電波を引く必要がない」との回答だった。今やほとんどの場所で電波が通じるためすっかり忘れていたが、そういえばひと昔前までつながらなかったことを思い出した。
乗車していた人の中には、今回のイベントのためにネイルアートをしたという人も。銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、千代田線、有楽町線、半蔵門線、南北線、副都心線、と創業順に描かれていた。
(太田智美)
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