ロボットが「助けて」と言ったら? 東大、人とロボットの実証実験を品川で実施
遠隔コミュニケーションデバイス「TiCA(チカ)」が開発された。ロボット利用時のトラブルで、周囲の人に助けを求めるような使い方を想定しているという。
自律型ロボットが人間に「エレベーターのボタンを押してくれますか?」とお願いしてくる──そんなコミュニケーションの有効性を調べる実証実験が、3月20日〜23日に品川のオフィス街で行われる。
電通国際情報サービスと東京大学の暦本研究室は3月19日、遠隔コミュニケーションデバイス「TiCA」(チカ)のプロトタイプを共同開発したと発表した。宅配ロボットのような自律型ロボットと組み合わせ、想定外のトラブルが起こったときに周囲の人に助けを求めるような使い方を想定しているという。
TiCAは、遠隔地にいるオペレーターと人が音声でコミュニケーションできる球体状のデバイス。オペレーターの視線に応じて本体の表面に備えたLEDの光り方を変えることで、その場にいる人と目を合わせて会話しているようなコミュニケーションを行えるという。
実証実験では、ロボットベンチャーのZMP(東京都文京区)が開発した宅配ロボット「CarriRo Delivery」にTiCAを搭載。品川港南エリアの複合施設やビルにまたがる計350メートルの通路で、商品を目的地まで運ぶときに予想されるトラブルをコミュニケーションによって回避できるか検証するという。
例えば、走行中にすれ違う人から話しかけられたときは「ただいまコーヒーの配達中です」と言ったり、人が寄ってきて進路を妨害されたときは「すみませんが、そこを通してください」、目的のオフィスに到着するが、入り口のセキュリティゲートを通ってエレベーターに乗れないときは「ゲートを開けて、○階まで連れて行ってもらえますか」と周りの人にお願いする。
ロボットに話しかけられた人の反応や、受けた印象のヒアリング、画像解析技術による表情分析によって、ロボットの振る舞いが人にどのような行動を促すのかも検証する。
東京大学大学院の暦本純一教授は、実証実験について次のように説明している。
「ロボット・AIと、人間との自然な協調には大きな可能性があります。例えば、ロボットだけでは解決できないような状況でも、人間が遠隔地からロボットに入り込み、周辺の人とコミュニケーションをとるなどによって、より柔軟で現実的なサービスが実現できます。このような、人間とAIの能力がネットワークを越えてつながりお互いの能力を補完しあう社会をIoA(Internet of Abilities:能力のインターネット)と呼び、その技術研究と社会実装をISIDイノラボと東京大学暦本研究室が共同で進めています。今回は、遠隔コミュニケーションデバイスTiCAを使って、遠隔地の人間が宅配ロボットに入り込んだような感覚で接続する実験を行います」
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