日本最東端の南鳥島(東京都)周辺の排他的経済水域(EEZ)に、世界需要の数百年分に相当する1600万トン以上のレアアース(希土類元素)が存在することが分かったと、東京大学や早稲田大学の研究チームがこのほど発表した。レアアースが特に多く含まれる鉱物を効率よく回収する技術も確立したという。
レアアースは中国への依存が大きく、安定確保のため、日本近海での埋蔵量の把握が急務とされる。2013年には南鳥島周辺にレアアースを高濃度で含むレアアース泥が存在すると分かったが、正確な分布、資源量は明らかになっていなかった。
研究チームによれば、南鳥島の南方、約2500平方キロメートルの範囲に1600万トン以上のレアアースが埋蔵していると分かった。特に濃度が高いエリア(約105平方キロメートル)だけでも約120万トン、最先端産業で重要なジスプロシウムが57年分、テルビウムが32年分、ユウロピウムが47年分、イットリウムが62年分存在するという。
レアアース泥を構成する鉱物のうち、レアアースの大半が「生物源リン酸カルシウム」(BCP)という鉱物に含まれていることも判明した。BCPの粒は他の鉱物より大きく、ふるい分けして効率よく回収できるという。
遠心力で分離する「ハイドロサイクロン」を使って実験したところ、レアアース泥の総レアアース濃度を最大2.6倍(6030ppm)まで高められたという。これは中国の陸上にあるレアアース鉱石(300ppm以上)の約20倍で、BCPのみを完全分離する方法を確立できれば、約50倍まで濃度を高められる可能性もある。分離により、海上へくみ上げる泥が減り、コスト削減も期待できる。
これまで基礎研究にとどまっていた海底資源を活用する検討が可能になり、レアアースを活用したさまざまな産業の発展、創出につながる可能性があるとしている。
研究成果は、英国の科学誌「Scientific Reports」(電子版)に4月10日付(現地時間)で掲載された。研究には東大、早大の他、千葉工業大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東京工業大学、神戸大学、東亜建設工業、太平洋セメントが協力した。
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