国立天文台、新スパコン「アテルイII」の本格運用開始
国立天文台が新しいスーパーコンピュータシステム「アテルイII」の本格運用を始めた。システムは「Cray XC50」で、従来の「アテルイ」の約3倍の演算性能を持つという。アテルイでは行えなかったシミュレーションを行い、銀河の形成と進化、恒星と惑星系の起源などの解明を目指す。
国立天文台は6月1日、天文学専用のスーパーコンピュータシステム「アテルイII」の本格運用を始めた。米Crayの「XC50」システムを導入し、従来の「アテルイ」に比べて約3倍となる3.087 PFLOPS(ペタフロップス)の理論演算性能を実現したという。
アテルイIIは、国立天文台天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)が水沢キャンパス(岩手県奥州市)で運用する。同プロジェクトではスパコンを共同利用できるようにして国内外の天文学者のシミュレーション研究をサポートしており、18年度には約150人の研究者が利用する予定。
約4万のコアを搭載したアテルイIIの演算性能は3.087ペタフロップス。アテルイでは計算できなかったシミュレーションも可能になり、例えばこれまで実際より少ない星の数でしか行えなかった天の川銀河のシミュレーションが、数千億個の星全てで行えるようになるという。
利用者の1人で星の誕生の研究をしている法政大学の松本倫明教授は「前システムの約半分の時間でモデルの計算が可能になった。われわれのように観測との比較を視野に入れた研究にとって重要なことだ」とコメント。CfCAのプロジェクト長である小久保英一郎教授は「現代天文学におけるシミュレーションの役割はますます大きくなってきている。アテルイIIが超新星爆発の機構や、銀河の形成と進化、恒星と惑星系の起源などの問題を解き明かすことを期待する」としている。
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