NEC、シリコンバレーに新会社「NEC X」設立 スタートアップに研究技術提供し、新事業開発へ
NECがシリコンバレーに新事業創出を目指す新会社「NEC X」(エヌイーシーエックス)をを7月に設立する。同社が持つ画像認識や耳音響認証、IoT通信などさまざまな技術をシリコンバレーのスタートアップ企業と掛け合わせて新事業を立ち上げ、それを買い戻すことでNECの新しい柱にする狙い。
NECは6月20日、シリコンバレーで新事業開発を行う新会社「NEC X」(エヌイーシーエックス)を7月に設立すると発表した。画像解析技術やIoT通信技術など、同社の研究所が開発した技術を早い段階で公開し、現地のスタートアップ企業と共同でスピーディな事業開発を狙う。
事業テーマの選定はNECで行う予定だが、NEC Xを通じて技術や人材をシリコンバレーに投入し、現地のスタートアップなどをパートナーに迎えて事業開発を進める。インキュベーターやアクセラレーターといった現地のスタートアップ・エコシステムを活用する狙いもある。
NECで新規事業開発を担当しNEC XのCEOに就任する藤川執行役員は「コーポレート発の取り組みだからこそできる強みがあると思う」と話す。「NECの研究所で作られた技術をベースに事業を作ることができるので、アクセラレーターにとってもクリアしなければいけない技術的な壁が低くなる。また、資金調達の面も心配が少ない。こうした取り組みは、日本でも北米でも少ない」(藤川執行役員)
また、アメリカの研究開発企業であるSingularity University(シンギュラリティユニバーシティ)と連携して最短1年で新事業を立ち上げる「NEC アクセラレータープログラム」も実施予定。第1弾として3社のスタートアップを選定し、事業開発に向けて取り組んでいるという。「通常NECの事業開発は最低でも2、3年かかっていたが、今の時代にそれだけ時間をかけると製品は市場のニーズに合わなくなる。世界と戦える市場を、1年で駆け抜けるのが重要だ」(藤川執行役員)
NEC Xで開発した新規事業はNECが買い戻して同社の中核事業に育てる、あるいは独立して運営することも検討する。「スピンオフとしてNECと平行して走るものがあってもいいし、その事業がNECと合わなければスピンアウトしてもいい。次の投資に向けた余力が生まれる。他にも技術のライセンス契約などマネタイズできる方法はある」(藤川執行役員)
藤川執行役員以外にも、NECからはピージー・マドハヴァン氏(ビジネスイノベーションユニット エグゼクティブ・データ・エバンジェリスト)が新規事業開発リーダーとしてNEC Xに参加。マハトヴァン氏は米Microsoftでの就業経験やスタートアップの立ち上げ経験を持っているだけでなく、電気工学やコンピュータサイエンスで大学の教鞭をとっていたこともあり、NEC Xの取り組みは「過去3つのキャリアを集結できるもの」であり「日本語で言う“生きがい”」を感じたという。
「私は、NEC Xをぐつぐつと沸き立つ炉の中に知財やビジネス感覚、アクセラレーターなどさまざまなものを混ぜて煮ていく溶鉱炉だと考えている。その溶鉱炉から強固でユニークな合金――NECのスタートアップが生まれる」(ピージー・マドハヴァン氏)
NEC Xの目標は、2022年までに1000億円規模の事業ポートフォリオを形成すること。日本だけでなく、北米やインドなど世界各国にあるNECの研究所からも技術やアイデアを持ち込んで事業化につなげることも視野に入れているという。
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