盛り上がるブロックチェーン市場 日本進出を狙う欧州ベンチャーの考え:あなたの知らない欧州スタートアップの世界(3/3 ページ)
欧州のスタートアップが、ブロックチェーン事業で日本進出を狙っている。どんな企業が日本展開を考えているのか。
通信会社と連携 発展途上国のユーザーも手軽な送金が可能に
フランス人が創業した「Telcoin」(テルコイン)は、「銀行口座はないが携帯電話は持っている」という人が多い発展途上国の住民に対し、携帯電話とブロックチェーンを組み合わせた金融サービスを提供しようとしている。
通信会社向けのトークンを発行し、海外向けコインの使用や手続きを安く、早くできるようにしているのだ。
Telcoinの最初の狙いは、発展途上国への送金だ。通信会社を介することで顧客確認が不要になる場合がある。また仮想通貨全般にいえるが、手数料が下がり、送金も高速化にもつながる。
例えば、ある国に送金したいときは通信会社からトークンを購入する。そのトークンはケータイウォレットに送金され、Telcoinの仕組みを介して送金先のウォレットに送られる。このトークンは現地で受け取った人が現金に変えることができ、トークンとしても保存可能。
先述したように、手数料が格段に抑えられることと、携帯電話を持っていれば発展途上国の人でも簡単に使えるようになることがメリットだ。
仮想通貨のリアル店舗
14年に創業されたフランス発の「Coinhouse」は、一般的な仮想通貨取引所の他、対面で仮想通貨を購入できるリアル店舗を手掛けている。上層部の顧客に1対1でやりとりするスタイルをとっており、オンラインでは1000ユーロ程度、対面では4000〜5000ユーロ購入するケースもあるという。オンラインで獲得できない層を囲い込む戦略が見事的中したというわけだ。
同社は、セキュリティ性能が高いことで知られるハードウェアウォレットを提供する仏Ledgerの事業拡大に伴い、17年末に子会社化。欧州や米国の前に日本進出を検討しているのは、日本の大手企業やリテールカスタマーに興味を持っているためだ。
同社は「フランスは日本ほど政府が絡むような仮想通貨関連の事件がなく、メディアがメインストリームを取り上げているわけでもない」とし、「自国のフランスでは仮想通貨用の口座を作るのが難しく、大手企業は話をまともに聞いてくれない。フランスでは銀行と組んでイベントをやることすらかなわない」と語った。
日本を求める海外
パネルディスカッションでご一緒したメンバーは全て海外企業で、一様に日本への魅力を語ってくれたが、なかなか海外で日本人と会う機会が少なく困っていると嘆く。日本市場でブロックチェーン事業を展開することに需要はある。あとは行動するだけだ。
著者:アドライト(企業情報)
イノベーション創造を支援するコンサルティング会社。大手企業や中堅企業のオープンイノベーションをマッチングから事業化まで一気通貫で並走しながらサポート。新規事業開発の支援や国内外スタートアップの育成、主要国立・私立大学との産学連携プロジェクトも豊富。現在、ブロックチェーンのアクセラレーションプログラムを2019年初頭に立ち上げるべく準備を進めている。
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