どんなことに向いている? 10分で知る「ブロックチェーン」の使い道(1/2 ページ)
最近「ブロックチェーン」で既存の業務システムを代替しようという動きが多く見受けられます。しかし、何でもかんでもブロックチェーンで代替できるものなのでしょうか。日本ブロックチェーン協会の「中の人」に聞いてみました。
「ビットコイン(Bitcoin)」に「ブロックチェーン」――ニュースなどで耳にする機会が増えた言葉です。技術自体の利便性が高いことから、IT・金融関連を中心にさまざまな業種の企業が利活用を模索しています。しかし、これらの言葉について理解が進んでいない、あるいは曖昧になってしまっているという人も少なくないと思います。
先日、日本ブロックチェーン協会の樋田桂一事務局長と、電縁の石原玲一取締役(JBA事務局員兼務)の2人からブロックチェーンの基本について話を伺い、その模様をまとめました。
引き続き、この記事ではお2人からブロックチェーンの活用法についてお話を伺い、その模様をまとめました。
読者の皆さんにとって、参考になれば幸いです。
ブロックチェーン利用は4つの軸に大別される
―― ブロックチェーン技術がビットコインを実現するために生まれてきたものだということは良く分かりました。
漠然としていて恐縮ですが、ブロックチェーンはビットコイン以外にどのような使い道があるのでしょうか。
石原氏 ブロックチェーン技術の応用では、「FinTech(情報技術を使った金融)での利用」か「Fintech以外での利用」かという軸で語られることが多いのですが、実際に見ていくと「仮想通貨としての利用」なのか「プラットフォームとしての利用なのか」という軸も重要です。
仮想通貨を軸とした場合、仮想通貨決済の導入、あるいは独自の仮想通貨の発行という使い方が主です。おのずとFinTech絡みとなります。
プラットフォーム性を軸とした場合、FinTech絡みでは決済や契約の自動実行などに使えます。一方、FinTechから離れた使い方としては、情報のトレース(追跡)、メッセージングやコミュニケーションやデータの流通といったものが考えられます。
契約の自動化をブロックチェーンでやるメリットは?
―― 契約の自動実行は「スマートコントラクト」とも呼ばれていますよね。やろうと思えば既存の技術で実現可能だと思うのですが、あえてブロックチェーンを使うメリットはどこにあるのでしょうか。
石原氏 スマートコントラクトは(契約の)プログラム自体がブロックチェーンに乗ります。
ブロックチェーンでは、トランザクション(取り引き)の情報が連鎖して、その更新情報も参加者に公開されます。「どういう処理がどのように実行された」という情報も明らかにされます。つまり、不正な処理を後から行うことが非常に難しくなることがメリットの1つです。
また、複数の「マイナー(※)」のコンピュータでそれぞれに処理を進行するので、特定のサーバが動いていなければいけない、ということもなくなります。ある意味で分散処理ができるのです。
※ Miner:採掘者。ブロックチェーンベースの仮想通貨では、データの取りまとめをすることで「報酬」が発生する仕組みとなっているため、ブロックチェーンへの参加者をこのように呼んでいる
―― センターサーバを設けて集中処理するのと比べると、システムのパフォーマンス的にも有利なのでしょうか。
石原氏 (処理する)ものによります。マイナーがそれぞれに処理を進行するということは、1つのマイナーで全ての処理をしていることになるため、処理速度におけるメリットはほとんどありません。
―― ブロックチェーンの利用は「処理の高速化」というよりも「スマートコントラクトがもたらす信頼性」に重きを置いた結果ということですか。
石原氏 そうですね。あとは、ブロックチェーンを使うことで、システム全体のダウンタイム(処理不能時間)をなくせることも大きいメリットです。
関連記事
- 今更聞けない「ブロックチェーン」あれこれ 基本を5分で解説
最近、ニュースで良く耳にする「ビットコイン」や「ブロックチェーン」という言葉。聞いたことはあっても意味までしっかり理解している、という人は少なくないと思います。そこで、日本ブロックチェーン協会の「中の人」に解説してもらいました。 - ブロックチェーンでコスト削減、必要なのは「業務をシンプルにすること」
ビットコインを実現するために生まれた「ブロックチェーン」だが、その汎用性の高さから、現在さまざまな分野で活用が見込まれている。ただし、そこには期待と実態のすれ違いもあるかもしれない。 - 「本格展開が始まる」――日本IBMがブロックチェーンに熱視線 狙うニーズは
日本IBMが、ブロックチェーンシステムの開発、運用を支援する企業向けサービス「IBM Blockchain Platform」の提供を始める。 - 三菱UFJ、仮想通貨「MUFGコイン」初公開 スマホアプリで送金
三菱東京UFJ銀行が今年5月に試験導入した仮想通貨「MUFGコイン」のデモンストレーションが「CEATEC JAPAN 2017」で披露。 - 「マイニングはゲーム理論」「ブロックチェーンの源流、27年前に」――ビットコインが受け継ぐ“DNA”、MIT研究員が語る
米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの研究者が、ビットコインが受け継ぐ技術とその長所・短所を語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.