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人工知能開発は「儲けないと意味がない」 東大・松尾豊さんが見た“絶望と希望”これからのAIの話をしよう(日本編)(3/4 ページ)

日本が人工知能開発で世界と戦う上で可能性のある分野や領域は。日本国内におけるディープラーニング研究の第一人者である東京大学の松尾豊特任准教授に聞く。

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松尾さん

 すごくシンプルで、日本が世界レベルでシェアを獲得している分野は何かを考えればいいんです。自動車、産業ロボットだけでなく、素材系、部品系といろいろな分野があります。グローバルニッチと呼ばれる分野もたくさんあり、そういった分野は勝ち目があると思います。

 現在のディープラーニングの大きな応用先は画像認識で、要はコンピュータに「目」ができます。例えば、機械メーカーが画像認識で作業を自動化したり、新しい製品を作ったりというのは意外とすぐにできます。

 逆に、インターネット上の画像認識はやり尽くしてしまい、もうあまり使い道がない。画像検索やFacebookのタグ付けの精度がちょっと上がることにどんな意味があるのか。

 それよりもリアルな世界で、製造業、農作業、食品加工などの手作業が自動化できる方が大きい。シェアが高いところは早いうちに取り組んだ方がいい。

 ゼロから世界シェアを奪うような製品・サービスを考えるのは大変ですが、すでに世界シェアをかなり獲得している製品・サービスを起点に考えた方が勝ち目があるという、割と単純な発想です。

――例えば「技術はあるけどディープラーニングの知識はない」というような町工場の技術者はどうすればいいのでしょうか。

 トランジスタができたときと同じで、基本的には他の人の作り方をまねすればいいんです。若い人がいるなら、その人がディープラーニングを勉強すればいい。

 もともと技術はあるのだから、今の加工技術やベテランの熟練技術をディープラーニングとどう組み合わせたらいいかを考え、機械を作ってしまうといいでしょう。そして、それを売ってもうける。

 要は再投資の回転数が大事で、AmazonやFacebookはそれができているので短期間で大きく成長できた。現代は非常にチャンスにあふれた時代で、トランジスタや内燃機関などの大きな変革をもたらす技術が再び登場したようなものなんです。

――松尾さんのお話を聞いていると「ちゃんと勉強しましょう」のひと言に尽きると感じます。

 そうですね。あとは若い人にチャンスを与えて下さいと。僕は高専に通っている学生が特にチャンスだと思っています。ハード面のことが分かっているので、ディープラーニングを勉強すればかなりの強みになります。彼らは時間があれば、あっという間にマスターするでしょうし、頑張ってほしいですね。

「大企業が動かない」のは仕様 「そういう設定のゲーム」と思ってプレイする

――大企業がダメだと嘆いていても仕方ない。可能性のある所に目を向けましょうと。

 面白かったのが、僕があるとき日本社会の問題点についてぼやいていたら、ドワンゴの川上さん(カドカワ川上量生社長、ドワンゴCTO)が「そういう設定のゲームだと思ってプレイした方がいい」と表現していたことです。

――どういう意味でしょうか。

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