人工知能開発は「儲けないと意味がない」 東大・松尾豊さんが見た“絶望と希望”:これからのAIの話をしよう(日本編)(4/4 ページ)
日本が人工知能開発で世界と戦う上で可能性のある分野や領域は。日本国内におけるディープラーニング研究の第一人者である東京大学の松尾豊特任准教授に聞く。
RPGの中でドラゴンが村を襲ったことに対して「そもそも村を襲うなよ」「こんなにモンスターが出てきてひどい」と言っても意味がないですよね。そういう設定があると分かった上で、どう戦っていくかを考えてゲームをプレイしていく。
歴史的に見ても、大企業が立ち上がっても何も生まれない可能性の方が高い。それならそういう設定だと仮定して、自分がどう振る舞うかを考えた方がいいでしょう。
――「先読みして動けるプレイヤーが強い」という話につながりますね(インタビュー前編)。人のせいにするのではなく、自分の責任で動きましょうと。
そうです。みんな「国が」「大企業が」と言いますが、今の時代をシミュレーションゲームのように捉えてプレイした方が面白いですよ。現代は、日本という安定していた国が米中の両大国に挟まれて弱ってきている、少子高齢化で社会のさまざまなところで制度疲労が起きている、大企業がどんどん倒れている、という設定です。かなりハードモードのシナリオですが、決して“無理ゲー”ではありません。
もちろん、不安定な時代なのでいろいろなことが起こりますが、うまく振る舞えばすごく良いこともたくさん起こると思います。お城は荒らされているけど、宝物がいっぱい落ちているような状態。常に「お城は平和です」というような人生だと面白くないですよね。僕はこのゲームをクリアする「勇者」が若い人の中からたくさん出てきて欲しいと思っています。
インタビューを終えて
松尾さんの抱えておられる「絶望」と「希望」は、本来ならこの前後編のインタビューでは書き記せないほどあると松本は感じました。
インタビュー公開後は、人工知能開発競争における日本の立場や、松尾さんの見解について、ソーシャル上でさまざまな議論がなされると思います。取材の中で印象的だったのは、松尾さんがこれからを担う若者に対して大きな希望を持たれている点です。
誰かが何かをしてくれないことを嘆くよりも、自分だったらこの世界にどんなインパクトを残せるかを考えた方が、確かに面白い。才能ある若者たちを、松尾さんのような“大人”たちが支援してくれる世界には希望があります。
この“想い”が日本中でこれから動こうとする若者たちに届くことを願います。
著者プロフィール:松本健太郎
株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。
著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org
編集部より:著者単行本発売のお知らせ
人工知能に仕事を“奪われる”、人工知能が“暴走する”、人工知能に自我が“芽生える”――そんなよくありがちな議論を切り口に、人工知能の現状を解説してきた連載「真説・人工知能に関する12の誤解」が、このたび、書籍「AIは人間の仕事を奪うのか? 〜人工知能を理解する7つの問題」として、C&R研究所から発売されました。
連載を再編集し、働き方、ビジネス、政府の役割、法律、倫理、教育、社会という7つの観点から、人工知能を取り巻く問題を理解できる構成に仕上げています。この本を読めば、人工知能の“今”が大体分かる――連載を読んでいた方も、読んでいなかった方も手に取っていただければ幸いです。本書の詳細はこちらから。
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