「ウイルスに感染したヒアリは、あまりご飯を食べなくなる」――京都大学が10月2日、外来生物であり害虫でもある「ヒアリ」の生態についてこんな研究結果を発表した。感染の前後で摂取する栄養素の好みも変わることが分かり、駆除方法への応用が期待されるとしている。
研究したのは、京都大学生存圏研究所の講師、楊景程(ヤン・チェチェン)さんのグループ。さまざまな動物で、病原体に感染した個体には採食量の低下や栄養素の嗜好(しこう)性変化が報告されていることから、ヒアリについても同じような変化が起きるか研究した。
研究では、ヒアリ(Solenopsis invicta)にヒアリの病原ウイルス「SINV-1」(Solenopsis invicta virus 1)を感染させ、採食活動を観察した。結果、ウイルスに感染したヒアリのコロニーは、感染していないコロニーに比べて採食行動が低下し、脂質摂取量も減少。炭水化物に富む食べ物を好むようになるのを確認した。
ヤンさんは、「人間がインフルエンザに感染すると、回復するために脂っこい食事の代わりに炭水化物を食べるようになる。なんとウイルスに感染したヒアリでも同じような行動を見せることが分かった」と驚く。
この実験結果から、ヤンさんは「ヒアリの駆除に当たり、ヒアリがウイルスに感染しているか考慮する必要がある」としている。嗜好性がシフトするということは、感染前のヒアリを誘引する餌にあまり食いつかなくなり、駆除効率が下がる恐れがあるからだ。
研究成果は、英国の科学誌「Scientific Reports」オンライン版に9月10日に掲載された。
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