ではなぜ、第6版から突然新語やネットスラングも多数収録するようになったのか。木村さんは「高校生が『こんな身近な言葉も載っているのか!』と思うような語を入れることで、辞書に対して親近感を持ってもらえたらと考えた」と話す。
評論用語のような“お堅い”言葉だけでなく、高校生にも身近な言葉を入れることで「退屈そう」という辞書のイメージを取り払い、若者の辞書離れを防ぐ狙いがあったという。
また、新語の収録はSNSの利用層や社会的な影響力の拡大も鑑みた結果でもある。木村さんをはじめとした編集担当者は、本や新聞、雑誌、テレビなどあらゆるところから収録語の候補となる言葉を集めているが「極力新しいものまで候補にできるよう、SNSは毎日チェックしている」(木村さん)という。
集めた言葉は編集委員と選定。「老若男女を問わず広く使われているか」「俗っぽすぎないか」「寿命が短くはないか」などさまざまな観点から検討を重ね、収録する語や語義を選出した。ふるい落とされた言葉の中には、ニュースでも目にする「爆買い」や三省堂の「今年の新語 2016」に入った「エモい」などもあったという。
「爆買い」が選考からもれた理由について、木村さんは「この言葉が下火になったという面もある。新語の寿命は推定するのが難しい」と振り返る。そうした課題がある中で、現代新国語辞典が手厚く新語を収録できたのには、高校生向け辞書ならではの理由もあった。改訂頻度が他の辞書と比べて高いのだ。
「一般的な辞書の改訂には7、8年ほどかかりますが、現代新国語辞典は教科書の改訂に合わせて4年ごとに改訂しています。短い分、新語も入れやすい」(木村さん)
一方で木村さんは「都合の良いことを言ってしまうと『この語は寿命が短いな』と思ったら次の版で消すこともできなくはない」と明かした。第6版に追加された新語は、4年後にどうなっているだろうか。
関連記事
- 『広辞苑』10年ぶり新版 「ツイート」「ビットコイン」など1万語追加 「炎上」には「ネット炎上」の意味も
『広辞苑』の10年ぶりの改訂新版が発売へ。「ツイート」や「ビットコイン」「クラウド」「自撮り」など、IT関連語を含む約1万項目を追加した。 - 若者はみんな使っている? 謎のワード「ギガが減る」とは
あなたのスマホ、“ギガ”減っていませんか? - Twitterで草生やし放題? 文字数拡大で
日本語はTwitterの文字数上限拡大の対象外。しかし、半角英数では“草生やし放題”らしい。これはどういうこと? - 「エモい」は「外来語形容詞四天王」になれるか? 日本語研究者の熱視線
ここ数年「エモい」という形容詞をSNSなどで頻繁に見かけるようになりました。しかしこうした形容詞はこれまで定着せずに消えていくことがほとんどだったそう。ではなぜエモいは若者たちの間で使われ続けているのでしょうか。現代日本語の文法や語彙(ごい)を研究している熊本大学の茂木俊伸准教授に伺いました。 - 「オラオラ」はなぜ、「オラつく」という形で動詞化されたのか?
最近SNSで見かける「オラつく」という動詞。「オラオラ」から生まれ、横柄な感じや強気な態度の人に対して使われているようだが、「オラつく」という形になったのには理由があるようだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.