「AI書店員」が本をお薦め、ディープラーニングで表情分析 トーハンがAIに取り組むワケ(1/2 ページ)
Webカメラの映像から、認識した人物の性別、年代、表情を分析して本をお薦めするAI書店員「ミームさん」を体験。トーハンに開発の狙いを聞いた。
「たまにはゆっくり本を読もう!」と思って本屋へ行っても、あまりにたくさんの本があって選べないことがある。それもそのはず、2016年に出版された新刊書籍は約7万8000点にも上る。1日当たり約213冊出版される計算だ。この大量の本の中から、どれを選べばいいか分からない――そんなときに頼りになるのが、あなたに合った本をお薦めしてくれるAI書店員「ミームさん」だ。
AIが本をお薦め
ミームさんは、出版取次大手のトーハンとAI開発を行うsMedioが協力して開発した「その人に最適な本をお薦めしてくれる」人工知能だ。ディスプレイの前に立った人物をWebカメラで撮影し、ディープラーニングを使った画像認識技術で性別や年齢、表情を推定、その人の気分に合わせた書籍を表示する。
ECサイトで活用されているような「購入履歴を基に、その人の好みの傾向を推定する」というタイプのAIとは異なるため、これまであまり本を読んでいない人でも気軽に利用できるメリットがある。
このミームさんが11月10日、東京・渋谷のスマートニュース社内で開催されたイベント「東京読書サミット」に登場した。東京読書サミットは、読書サークル「読書するエンジニアの会」が主催した読書イベント。
決して大きな規模ではないが、ミームさんを企画したトーハン 仕入企画推進室マネジャーの吉村博光さん(施策推進グループ)は、今回のイベントにミームさんを登場させた理由を次のように話す。
「ミームさん自体、これまでの常識を打破するような、本と人との出合いを実現するために開発された。こうしたイベントやリアル書店など、いろいろな場で体験いただいている」(吉村さん)
体験してみた
早速、ミームさんを体験してみた。ディスプレイ上部に設置されたWebカメラに顔を映すと、ディープラーニングによる顔認識技術で、映った人物の性別や年代、表情を基に感情を推定する。例えば「女性」「31歳〜59歳」「うれしい」といった具合だ。性別、年代、表情に独自のランダム要素を掛け合わせた70種以上のパターンに合わせ、トーハンが選書した本を提示する。
実際に体験すると、筆者の表情は「うれしい」「穏やか」の比率が高く、「楽しんでいる」状態と判定された。そんな筆者には“大好きな友達と話したくなるベストセラー青春小説”という『夜のピクニック』(恩田陸)がお薦めされた。
本をお薦めする文言は、吉村さんが考案した。「初期のミームさんでは、お薦めする理由は説明してなかった。体験者から『何でこの本を薦められたのか分からない。理由も分かった方が楽しい』という意見があり、この形になった」としている。
なぜトーハンがAIソフトの共同開発に着手したのだろうか。
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