「遠隔合奏」が普通になる時代 NETDUETTOと5G:特集・ビジネスを変える5G(2/2 ページ)
ルータと楽器、その2つを作っているヤマハらしい技術が集約されたNETDUETTOが5Gで飛躍しようとしている。
5Gで400キロをつなぐ「合奏」
5G版NETDUETTOに関しては、2017年11月にドコモと共同でデモを行っている。日本科学未来館で実施されたこのデモでは、ステージ上のキーボードプレイヤーと、別の防音室にいるシンガーとが5Gを経由してライブセッションを行った。低遅延なネットワーク回線が必要なNETDUETTOではこれまで光ファイバー回線が必須とされていたが、ここでは5Gの無線ネットワークで実現した。
さらに5Gを用いた多地点高臨場遠隔合奏も行われた。実際に離れた3カ所の演奏を5Gを介して接続し、ライブを実施したのだ。東京ビッグサイトではギタリスト虎岩正樹さんとボーカル/MCの大木亜希子さん、東京スカイツリータウン(ソラマチ)でドラマー米窪絵美さんが、そして東京から最短の道のりでも400キロ以上ある福井県恐竜博物館ではベーシスト秋吉雅史さんとボーカリスト/MCの藤社優美さんが、それぞれの会場で協調してプレイする「多地点高臨場遠隔合奏(リアルタイム遠隔合奏)」として12月6-7日にデモされた。
NETDUETTOは音楽を演奏する人にはすばらしいソリューションで、同じスタジオやライブ会場で演奏することができない人たちを簡単に結ぶことができる。だがそれには光フレッツなどの固定回線とPCが必要だ。
回線工事が必要となるためオフィスや学校などでは導入できないところもある。それを乗り越えられるのが携帯電話ネットワークだ。
2010年のNETDUETTOのベータテスターのディスカッションで、iPhoneやAndroidでLTE回線を使ってネットセッションをやりたいと原さんに提案していたのは筆者だけではなかった。だがLTEでは伝送スピードはFTTH並みになったとはいえ、ネットを介したオーディオの遅延は100ミリ秒、よくて60-70ミリ秒。20-30ミリ秒ならば可能な合奏も、これでは困難だ。当時のスマートフォンには性能が不足していたというのもある。
だが、LTEよりはるかに高速なデータ伝送が可能なうえに低遅延の5Gならば十分可能性がある。そして現在のスマートフォンの処理速度はパソコン並みだ。
5GでNETDUETTOを使ったミュージシャンたちは、音声だけならばごく普通に演奏できたと話しているという。「私たちはいつも使っているギターは何も変えていない。いつもと同じことをやっている。システムやテクノロジーが完全に透明になっている」というコメントが印象的だったと原さんは話す。意識せずに、リアルにやっているのと同じことができるということだ。
音楽のライブステージでは無線技術が使われるようになって久しい。ギター、ボーカルをワイヤレスで飛ばすシステムはミュージシャンが普通に使っている。遠隔地をつなぐライブも、下回りが5Gになると「完全に透明な」システムになる。
最終ゴールは「スマホに楽器をガチッと繋げれば演奏ができること」だと原さんは言う。最近の電子楽器がBluetooth対応しているように、将来のギターやシンセサイザーには5Gが組み込まれて、特に意識しなくてもネットワークセッションができる、オーバードライブやコンプなどのエフェクターをギターにつなげるように、手軽に遠隔地とセッションする、そんな時代はそう遠くはないのかもしれない。
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