「クリエイターとユーザーの架け橋に」 ソニーが8Kテレビや立体音響を手掛ける理由:CES 2019(2/2 ページ)
ソニーが「CES 2019」開幕前日のプレスカンファレンスで同社初の8K液晶テレビや立体音響技術「360 Reality Audio」を紹介。吉田憲一郎社長は「コンテンツの感動を届けるクリエイティブエンタテインメントカンパニーでありたい」と強調した。
オブジェクトベースの空間音響技術「360 Reality Audio」
ハイレゾをオーディオソースの「音質」にフォーカスする技術として捉えるなら、ソニーが発表した独自の立体音響技術「360 Reality Audio」は、豊かな「音場」に注目した技術といえる。アーティストが音楽を演奏した現場の臨場感をリスナーの元でありのままに蘇らせることが目的だ。
ドルビーアトモスやDTS:Xと同じ、オブジェクトベースの空間音響技術をベースとする360 Reality Audioは、ファイルのエンコード(符号化)にドイツの研究機関であるフラウンホーファーが開発、標準化した「MPEG-H 3D Audio」のオープンな技術を採用する。コンテンツは専用となり、必要なライブラリを組み込んだモバイルデバイス向けのアプリで再生が可能。ユーザーの周囲360度全天球に広がる音響体験が楽しめるという。
今回のCES時点では技術コンセプトの紹介にとどまったが、今後ソニーは対応するコンテンツを主要な音楽レーベルや音楽配信サービスとともに協力しながら形にしていく方針を示した。音源は専用のものを用意する必要があるが、再生環境は手軽さとオープンさを追求している。例えばスマートフォンなどモバイル端末向けの音楽配信サービスのアプリに、ソニーが提供するデコーダーとレンダラー、バーチャライザーをセットで追加し、特殊な再生機器なしで再生する方法も検討している。
ソニーの展示ブースでは、13基のスピーカーとヘッドフォンによるバーチャル再生で360 Reality Audioの音源を試聴できた。ボーカルの声や楽器の音色に豊かな臨場感と明瞭な定位感が感じられる、まさしくリアリティーに富んだユニークな音楽体験。これならハイレゾに続き、ソニーが提案する「いい音体験」の柱の1つになるだろう。海外ではパートナーとして、世界的なライブエンタテインメント企業であるライブ・ネーション・エンタテインメントや、Deezer、nugs.net、Qobuz、TIDALといった音楽配信サービスが手を上げている。
ソニー・ミュージック エンタテインメントのロブ・ストリンガーCEOは、パートナーと協業しながら360 Reality Audioの技術を生かした音源を積極的に制作していくと宣言。ゲストとして登壇したミュージシャンのファレル・ウィリアムズさんは、「360 Reality Audioは、あらゆる環境で、スタジオで聴いているようなリアルな音楽リスニングが楽しめる。私たちアーティストも待望していた技術だ」と絶賛。自身も360 Reality Audioによる作品作りにチャレンジしてみたいと、大いに刺激を受けた様子だった。
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