国会図書館の“死蔵データ”活用へ 漫画家・赤松健さんが考える「マンガ図書館Z」の次の一手
青空文庫などが開催したシンポジウムに漫画家の赤松健さんが登壇。絶版漫画の無料配信サイト「マンガ図書館Z」を応用した新しい仕組みの構想を明らかにした。「出版社も作者ももうかる」という。
漫画家の赤松健さんは1月10日、絶版漫画の無料配信サイト「マンガ図書館Z」で実業之日本社と行っている実証実験の“拡張版”の構想を明らかにした。「実現すれば、出版社も作者ももうかる」(赤松さん)という。青空文庫などが都内で開いたシンポジウム「著作権延長後の世界で、我われは何をすべきか」のライトニングトークで発表した。
マンガ図書館Zは、赤松さんが取締役会長を務めるJコミックテラス(東京都千代田区)が運営している漫画配信サイト。実業之日本社とは2018年8月から、無許可で漫画を配信する“海賊版サイト”への対抗策として、過去に同出版社で発行・掲載した作品のデータを第三者からアップロードしてもらい、作家(権利者)の許諾を得て、広告付きで無料配信する実証実験を行っている。広告収益の8割は作家に提供し、残りを出版社と投稿者で折半している。
構想中の“拡張版”では、第三者から提供されたデータではなく、国立国会図書館が保有する絶版書などのスキャンデータを活用する。赤松さんは18年8月時点で、実証実験の仕組みを最終的に国立国会図書館に採用してもらうことを目指すと話しており、今回の発表でより具体的な構想を明らかにした。
赤松さんによれば、国立国会図書館では絶版書などのスキャンデータを多数保有しているが、多くは使われることなく“死蔵されている”状態。それを有効活用しようと考えたのだ。しかし、肝心の国立国会図書館には「『もったいないとは思っているが、図書館はもうけることができない』と言われた」(赤松さん)という。そこで考えたのが、新たに著作権管理団体を設立し、そこを通じて実証実験と同じような仕組みを作ることだった。
国会図書館は、管理団体に絶版本などのデータを提供。管理者団体はそのデータを使って電子書籍を作成し、作家から許諾を得た作品を広告付きで読者に無料配信する。合わせて、OCR(光学文字認識)を使った書籍本文のデータ化、権利者不明作品の裁定制度申請の自動化などにも取り組む他、管理団体が権利委託を受けていない著作物でも委託されたものと同じ条件で利用許諾できるようにし、著作物利用者の手間を減らす「拡大集中許諾」の仕組みも整備する。
管理団体と権利者である作家の間には出版社が入り、作者の捜索や連絡などを担当。広告収益の8割は作家に、残り2割は連絡手数料として出版社に還元する――という仕組みだ。「こうした取り組みは、出版社を中に入れないとダメ。作家と出版社に利益がでるようにしないと、うまくいかない」(赤松さん)
この仕組みにより、国会図書館はデータを有効活用できるようになり、出版社や作家も、これまで電子化が難しかった作品の電子化を進め、収益化につなげることができるという。さらに、新刊書の所蔵などで対立しがちな図書館と出版社との間に新たな協力体制を作るという狙いもある。
「図書館がもうけられないなら、日本漫画家協会と出版社で共同出資して管理団体を作れないだろうか。図書館との対立関係も解消して、みんなでもうかったらいい。いずれ、何とかしていきたいと思っている」(赤松さん)
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