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読みたいマンガがそこにある ファンの熱量で作る投稿サイト「アル」公開 漫画村に心痛めたけんすう氏が開発(2/3 ページ)

マンガファンによるマンガファンのための投稿サイト「アル」が正式スタート。ファンがマンガの見どころを投稿したり、新刊情報の通知を受け取れる。開発したけんすうさんは、「自分が欲しかったサービスを、マンガファンと一緒に作っていきたい」と話す。

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 「マンガがすごく好きだから。それに、マンガが停滞していくのを見るのも忍びなくて……」

 古川さんは、海賊版サイト「漫画村」に心を痛めていた。著作者に無断で電子化されたマンガの海賊版がネット上で大量に公開され、人気を集めていた問題。海賊版が横行すると正規のマンガが売れなくなり、マンガ家や出版社の収入が減って新たなマンガが作れなくなり、面白いマンガが読めなくなってしまう。マンガの市場の縮小が続く中、マンガ好きなIT起業家として、何かできないだろうか――。

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「アル」に統合された「漫画ビレッジ」

 1つの答えが、アルの前身となった、無料マンガのリンク集サイト「漫画ビレッジ」だ。出版社などが公式に無料公開している作品を集めた“合法無料マンガ”のリンク集で、友人のエンジニア・遠山晃さん(32)(@vexus2)とともに開発し、昨年5月に公開したもの。多数のサイトやアプリに散らばっている公式の無料マンガを1サイトに集約することで、多様なマンガにたどり着きやすくした(関連記事:「漫画村を置き換えたい」 “合法無料漫画サイト”「漫画ビレッジ」開発者の思い)。このサイトは人気を集め、月間500万〜1000万ページビューも閲覧されていたという。

 「次はマンガの情報をまとめたい」。そう考え、漫画ビレッジを発展させて作ったサービスがアルだ。「面白いマンガはたくさんあるはずなのに、次に読みたいマンガが見つからない」――自分自身の悩みを解決したかった。

 レストランなら「食べログ」、映画なら「Yahoo!映画」など、ジャンルごとにレビューサイトがあり、行きたいレストランや観たい映画を考える参考にできる。だが、マンガの情報や口コミが集約されたサイトがないと古川さんは感じていた。Amazonやブクログなど、1巻ごとのレビューを投稿できるサイトはあるが、作品丸ごとのレビューではない。また、Amazonなどには作品への批判や作者の中傷などネガティブな情報も多く、「マンガ好きによる、愛にあふれたオススメ情報」が欲しいファンとしては不満だった。

 「マンガファンは、自分に合ったマンガをもっと知ることができれば、もっとマンガを買うはずなんです。僕も、友人が熱くすすめてくれたマンガを、その場で大人買いしたりしている。ファンはこんなにマンガ愛を語れるのに、その情報がネット上にないのは、もったいないと思って」

 実は昨年、大手出版社幹部から、こんな相談も受けていた。「漫画村問題を受け、Netflixのマンガ版のような、出版社横断のマンガサービスを作る必要を強く感じているが、業界内ではなかなか難しい。ITに詳しく、マンガが好きな起業家を紹介してくれないか。「マンガが好きで、ITが分かり、起業しそうな人って、誰かな? と考えたら、自分だなと気づいて」

2000人以上のマンガファンとともに作る

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漫画サービスを作るサロン(仮)より

 アルは、古川さん1人で開発しているサービスではない。「漫画ビレッジ」を開発した遠山さんなど友人に手伝ってもらっているほか、Facebookに「漫画サービスを創るサロン(仮)」を開設し、ネットユーザーから募った2000人以上のマンガファンに、投稿やサービス改善を手伝ってもらっている。

 「自分の力でできる気がしなくて、人の意見を聞いています」。約20年もWebサービス開発を手掛けてきた古川さんは、謙虚な姿勢でこう話す。「僕自身、マンガについて自信がなくて。漫画サロンに集まる人の投稿を見るとみんなすごい。好きなマンガを聞くと『ア行』だけで何十冊も書いてくれて、『全部は書き切れません』って言っていたりとか。それと比べると『俺、マンガ読んでないな』って」

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