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街で見かける「あの文字」はフォントじゃないかもしれない? フォントと書体の“あるある”勘違い:デジタルネイティブのためのフォントとデザイン(2/3 ページ)
街角やビジネスの現場など身のまわりにある文字をきっかけに、フォントとデザインの世界を案内する新連載。今回取り上げるのは、ある書店のロゴ。
跡地にできた「文喫」は、どんなロゴタイプ?
続いて、最近のロゴタイプもチェックしてみよう。先ほどの青山ブックセンター六本木店は、渋谷区神宮前にある本店に統合された。跡地には書籍流通を担う取次会社の日販によって、「文喫」というあたらしいスタイルのお店が2018年12月にオープンした。雑誌コーナーから奥のスペースは有料で、本を購入しなくてもゆったり座って読める椅子やソファが多数あり、カフェコーナーも併設された書店だ。
文喫のロゴタイプは、遠目から見ても「うろこ」と呼ばれる部分の一部がひっくり返っていることが分かる。うろことは、文字の右上角にある三角の部分のこと。「なんだ、文字の細部をいじっただけじゃないか」と思う人もいるかもしれないが、実はとても手が込んでいる。
このロゴタイプの骨格と一致するフォントは、商用販売されている明朝体にはない。ロゴタイプのアウトラインデータと、代表的なフォントを重ね合わせてみるとよく分かるが、こまかい形だけではなくプロポーションも細部のラインも大きく異なっている。
『文喫』のロゴ(SVGデータ)と既存のフォントを重ね合わせてみると多くのラインが一致しない。フォントは左から(1)A-OTF A1明朝 Std Bold(2)A-OTF リュウミン Pr6 L-KL(3)Ro本明朝Pro L(4)FOT-筑紫明朝 Pr6 L
制作されたデザイナーの方が、クラシックな明朝体を意識しながらも、新しいスタイルの書店を象徴するものとして緻密にデザインを詰めていったのだろう。
このように、世の中には既存の書体とは大きく異なるロゴタイプが多くあり、そこには制作者であるデザイナーの仕事がきちんと存在していることも知っておいてもらえるとうれしい。「こんなものフォントを組んでアウトラインをチャチャッと直しただけでしょ?」ということではないのだ。
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