「ご趣味はなんですか?」「日本文学が好きです」「わあ、私もなんです。偶然ですね」──合コンや婚活パーティーでありそうな自己紹介のワンシーンだが、話しているのは人間ではなく、机の上に置かれたロボットだ。
一般社団法人CiP協議会は、2月9日に開催した「ロボットが会話を代行する婚活パーティー in 竹芝」の実施結果を12日に報告した。参加者28人から、計4組のカップルが誕生したという。
CiP協議会は、竹芝地区に「コンテンツ×デジタル」産業の拠点形成を目指し活動する団体。竹芝地区でテクノロジーを活用した新しいコンテンツを生み出していく一貫として、ロボット婚活パーティーを開いた。
なぜロボットで自己紹介?
日本の生涯未婚率が上がっている背景として、「多くの日本人が、自身のコミュニケーションに苦手意識を持つなどの理由があることから、コミュニケーションの起点にロボットを活用する本企画の開催を決めた」と、同協議会の高橋竜之介事務局長は語る。
代行ロボットには「小型で圧迫感がない」「開発環境が適している」などの理由から、シャープが開発した手のひらサイズ人型ロボット「ロボホン」を採用。特別協力のサイバーエージェントがロボットの会話内容を手掛けた。
事前に参加者が記入したアンケートを基に、サイバーエージェントのスタッフが作成した文章をロボットが読み上げ、相手の話に相づちを打ったりする。AI(人工知能)による会話文生成や音声認識は利用していない。
ロボットが会話を代行するメリットを、同社インターネット広告事業部アドテクスタジオで対話エージェントを研究する岩本拓也さんは次のように語る。
「限られた時間で自己紹介を効率的に行える。そんな中で自分の長所を伝えようとすると自慢に受け取られてしまいがちだが、ロボットを通すことで嫌みに聞こえにくい効果もある」(岩本さん)
ロボット婚活パーティーは、ロボット同士の会話(3分間)のみで完結する午前の部(男性8人、女性8人)と、ロボットの会話(3分間)の後に人同士でも会話する(5分間)午後の部(男性5人、女性7人)の計2回を行った。結果として、午前の部から2組、午後の部から2組の計4組のカップルが生まれた。
パーティー実施後にアンケートを取ったところ、「自分のプロフィール通りに話してくれているからロボットを信頼できた」「自分が思った通りの相づちをしてくれた瞬間に信頼度が大きくなった」というポジティブな意見がある一方で、「話された内容が少し古かったので、ロボットに対して信頼できなかった」など、リアルタイムの情報更新がないことに対する不満の声もあったという。
また、相手の外見の印象より会話内容に集中できるという声も上がった。「普段は好みの外見ではない相手の場合、話をあまり聞かないが、ロボットによる会話代行だったためしっかり内容を聞けた」(参加者)。さらに、「ロボットの対話に続けて話を聞きたい気持ちになった」と、コミュニケーションが円滑になったケースもあったという。
サンプル数が少なく、アンケートのばらつきも大きいことから結果に統計的な有意差は見いだせない。「定性的にはなってしまうが」と岩本さんは前置きした上で、「ロボットのどんな要素が人からロボットへの信頼性を上げるのか、現在調査している」とした。
今回のロボット婚活パーティーは実験的な取り組みだったため、今後同様のパーティーを開く予定はないとしている。
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