「ダウンロード違法化の範囲は制限するべき」 講談社の野間社長、海賊版対策でコメント
「ダウンロード違法化」の範囲拡大について、講談社の野間社長がコメント。「表現の自由を守る」「著作者の創作意欲を萎縮させない」といった前提を踏まえつつ、海賊版サイト対策を進めていくべきと説明した。
「海賊版サイトは撲滅したいが、大前提として表現の自由の侵害や、著作者の創作意欲を萎縮させることには反対だ」――漫画を無断掲載する海賊版サイトへの対策について、講談社の野間省伸社長が2月21日の決算発表会で言及した。
海賊版対策として、文化庁の文化審議会著作権分科会では、著作権法におけるダウンロード違法化の範囲拡大について議論されている。違法にアップロードされたことを知りながら、コンテンツを私的にダウンロードする行為を著作権法違反とする範囲を拡大し、漫画や論文など著作物一般に広げる政府方針を受け、「ネット利用者への影響が大きすぎる」「漫画村のようなストリーミング方式の海賊版サイトには効果がない」といった批判の声が識者から上がっていた。
2月19日には、法学者や弁護士を中心とした84人と1団体が連名で「慎重な議論を重ねることが必要」とする緊急声明を発表。漫画家の竹宮惠子さんや赤松健さんも、参議院議員会館で開催された反対集会で同様の主張をしていた。
本来被害者であるはずの漫画家からも反対意見があることに対して、講談社はどう考えているのか。野間社長や同社広報室の乾智之室長が答えた。
「悪質なコンテンツに制限するべき」「いろんな限定が加わること望む」
野間社長は「海賊版サイトは撲滅したいが、表現の自由を犯すこと、著作者の創作意欲を萎縮させることには最初から反対している。それを踏まえた上で、ダウンロード違法化の範囲拡大やサイトブロッキングなどの手段は必要と思っている」と説明。ダウンロード違法化の範囲拡大については「(権利を侵害する)悪質な電子書籍のダウンロードに制限するべき」と考えているという。
乾広報室長は「講談社として静止画ダウンロード違法化という言葉は使っておらず、権利を侵害したコンテンツのダウンロードの違法化を著作権法第30条に求めている」と話す。「いろんな形で批判をいただいているが、われわれが求めているのは、違法化の対象を著作物全てに広げることではないし、ハードルや限定を設けてもらうのは構わない。この先議論が進む中で、いろいろな限定が加わることを望んでいる」という。
同氏は昨年4月、ITmedia NEWSの取材に対し、「ブロッキングが唯一絶対の方策とは考えていない」「海賊版漫画のダウンロード違法化、リーチサイト対策の立法なども必要だ」と応じていた。講談社として、海賊版サイト対策にあらゆる手を尽くすべきだが、サイトブロッキングや漫画のダウンロード違法化などについては慎重であるべきというスタンスはいまも変わっていないという。
「漫画村」閉鎖でコミックの売上が回復
同社の2017年12月〜18年11月の決算は、売上高が1204億円(前年比102.1%)、純利益が28億円(同163.6%)と増収増益。紙の雑誌や書籍は厳しい状況が続くが、電子書籍の売上は315億円(同144.1%)と好調で、昨年4月に大手海賊版サイトの「漫画村」が閉鎖され「コミック分野を中心に紙と電子の売上が回復した」(吉富伸享取締役)としている。
野間社長は、漫画村を原因とする直接的な被害額や売上回復への影響は証明が難しいとしながらも、「(売上高の)数字だけを見ると、漫画村の閉鎖で電子書籍の売上が回復したという実感がある」と語った。
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