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「本当の失敗は、途中で諦めること」 AI開発は失敗に学べ、ミクシィが“ゼロからの挑戦”で得た教訓これからのAIの話をしよう(カスタマーサポート編)(1/4 ページ)

AIプロジェクトの失敗からどのような学びを得たのか。ミクシィのエンジニアが語った。

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 「本当の失敗は、失敗を理由に途中で諦めてしまうことです」――エンジニアとしてカスタマーサポート(CS)部門を裏で支えるミクシィの豊川弘樹さん(統括管理本部 CS部 CREグループ マネジャー)は、こう話す。

 豊川さん率いるCREグループには6人のエンジニアが所属し、技術を駆使してCS部門の業務をサポートしている。これまでCS業務を支援するためにさまざまなシステムを開発してきたが、CREグループ初となるAI(人工知能)プロジェクトを行うことになり、いくつもの壁にぶち当たった。

 CS業務をAIで効率化できないか――そう考え、約8カ月にわたってAI開発を進めたが、完成したものは実運用に耐えるレベルのものではなかった。豊川さんはプロジェクトの経緯を「カスタマーサポートAIの失敗と教訓」と題するエントリで公開している。

ミクシィ
ミクシィの豊川弘樹さんがブログを公開

 AIの開発や活用で苦戦する会社が多い一方で、こうした「失敗例」はなかなか表に出てこない。しかし、実際に試行錯誤している企業から学べることは少なくないだろう。

 豊川さんたちが今回の失敗から得た“教訓”とは何なのか。「機械学習の素人」(豊川さん)の状態からAIプロジェクトを始めようと思った経緯、どのようにAI開発を進めたか、どこで苦労したかなどを聞いた。

連載:これからのAIの話をしよう

いま話題のAI(人工知能)には何ができて、私たちの生活に一体どのような影響をもたらすのか。AI研究からビジネス活用まで、さまざまな分野の専門家たちにAIを取り巻く現状を聞いていく。

「AIには慎重だった」 プロジェクトの始まり

ミクシィ
豊川さん

 CS部門は、毎日多くのサービス利用者から寄せられる問い合わせメールに対応するチーム。社内約40人、外部パートナー約90人の計130人ほどで構成される。

 問い合わせの内容によってメールをカテゴリーごとに分類し、仕分けされた内容ごとに専門チームが調査・返信するというのが業務の流れだ。現状、1件1件のメールを担当者が手動で分類して返信を送る必要があり、日々対応に追われている。

 問い合わせの対応には、スピードと品質が求められる。早く返信できればもちろんいいが、利用者が何に困っているのかをきちんと理解し、的確な返信をしなければならない。

 これまでは、問い合わせメール内の文章をルールベースで分類・抽出して自動処理するシステムなどを開発し、大きな成果を上げてきたという。さらなる効率化を目指し、AIに着目した。

 豊川さんは「機械学習のシステムは開発も運用も大きなコストが掛かります。AI導入には慎重な考えでしたが、既に他の手法をやり尽くしたと感じていたので、取り組もうと決めました」と経緯を説明する。

 しかし、豊川さんのチームにAI開発の経験や知識がある人はおらず、ゼロからのスタートだった。

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