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LINEの「Clova Desk」が「スマートディスプレイありき」ではない理由体当たりッ!スマート家電事始め(2/2 ページ)

LINEが新しいスマートデバイス「Clova Desk」を発売する。7インチの液晶ディスプレイを搭載しているが、「スマートディスプレイありきで開発した製品ではない」という。詳しい話を聞いた。

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ずっと前から「ディスプレイ付きClova搭載デバイス」を企画していた

 LINEは、18年初夏に実施したプレスカンファレンスで、Clova Deskの発売を「今冬」と予告した。季節は少し進んでしまったが、なんとか“2018年度中”に出すことができた。周囲から「Clova Deskはまだ出ないの?」とよく聞かれたという中村氏は、「1日も早く出したいという気持ちはありましたが、LINEには満足する体験を提供できるレベルになるまで製品やサービスの完成度を高めてから世に出すという方針があります。じっくりと時間をかけ、良いものを作る時間をもらいました」と振り返る。


設定メニューからホーム画面に表示するコンテンツが選択できる。スケジュールは非表示選択も可能

 Amazonなどに追随したと見られることも多いが、中村氏によるとディスプレイ搭載のスマートデバイスを作る計画は、AIアシスタントのClovaを開発し始めた頃からあったという。その証拠に、LINEは17年の「MWC2017」でClovaを発表した際、ディスプレイ付きのスマートデバイス「FACE」のコンセプトも同時に公開している。中村氏はFACE公開時の評判も受け、「スマートなディスプレイの最適なカタチを追求しました。その現在の答えがClova Deskのデザインです」と説明する。

 Clova Deskのコンセプトは「Home Signage+Communication」だ。7インチのディスプレイがリビングのデジタルサイネージ(電子看板)として最適な大きさであること、LINEならではのメッセンジャーやビデオ通話などコミュニケーションサービスを中心に訴求していく。

 7インチのディスプレイを搭載したデバイスのサイズ感、1キログラムを切る質量についてもこだわりがあった。本体には3000mAhのバッテリーも内蔵。「片手で持ち運べるサイズ感を重視しました。普段はリビングに置いて、子どもを寝かしつけるときには寝室に持ち込んで使えます」(中村氏)

 「リビングと子ども部屋の両方にスマートスピーカーを置けばいいじゃない」という考え方もあるかもしれないが、まだ日本国内ではAIアシスタント付きのスマートデバイスが一家に複数台普及する段階にあるとは思えないので、「1台を使い回しながら良さを実感してもらう」というLINEの戦略は正しいと思う。

 ただ、現時点でClova Deskがどんなマルチルーム連携に対応しているのかは確認しておきたい。中村氏によると、1つのLINEアカウントに複数台のClova Deskをひも付けることができるという。

 さらにClova Friendsに装着できる赤外線リモコン「Clova Friends Dock」を1台まで、Wi-FiでClova Deskにつなぐことも可能だ。それぞれを連携させると、​例えばリビングとキッチンにClova Deskを置き、子どもの寝る部屋にはClova Friends Dockを用意して、リビングのClova Deskからキッチンのテレビを操作したり、子ども部屋の照明を消すといったことができる。

 テレビや照明器具については、現在Wi-Fiや赤外線信号によってコントロールできるものが増えている。操作結果をClova Deskのディスプレイに表示したいところだが、発売時点ではコントロールセンターのような機能はない。この点については東氏も「ぜひ検討したい」と答えてくれたので、期待して待つことにしよう。


フロントカメラにエフェクト機能を追加したところもLINEらしい

 スマートスピーカーといえば音楽を聞くデバイスというイメージを持っている人も多い。Clova Deskもスマートスピーカーから派生した「ディスプレイ付き」のスマートデバイスとして注目されることになるだろうが、中村氏と東氏は「Clova Deskはスマートスピーカーにディスプレイを載せただけの製品ではない」と口をそろえた。

 「AIアシススタントと音声インタフェースを搭載するスマートデバイスの市場は北米から先に立ち上がりました。その過程でスマートスピーカーが最初にヒットしたため、『スマートスピーカー』という言葉が一人歩きしているように思います。LINEの場合、目指している方向はClovaという独自のAIアシスタントを生かすデバイスを作ること。Clovaの世界観の下にスピーカー、ディスプレイ、オートモーティブなどが次々に加わってくるイメージです」

 つまり、視覚的にも情報を伝えられるディスプレイを載せたClova搭載のスマートデバイスは、今後もさまざまな形に進化する可能性があるのだろう。Clova Deskは音楽を聴くためのスピーカーでもあるため、ゆったりとしたサイズ感になっているが、今後はもっと薄くしてディスプレイ表示に特化したデバイスが登場することも考えられる。

 去年のLINEのカンファレンスではLINE MUSICで音楽ビデオを配信する計画があることも発表されたが、現時点ではまだ実現していない。東氏は「Clova Deskの発売当初はメッセンジャーとLINE MUSICの音楽再生が中心になりますが、今後もLINEのサービスプラットフォーム全体と連携して、Clova Deskによるユーザー体験を最大化していきたいです」と意気込みを語った。

スマートディスプレイの未来は?

 同じLINEのカンファレンスでは、同社が現在ディープ・ニューラルネットワークによるテキスト音声変換の技術(DNN TTS)をClovaに組み込むための研究開発にも力を入れていることを紹介した。これはある人物から少量の“声のデータ”をサンプリングすると、その声や話し方の特徴点を元にClovaが“コエマネ”できるという技術だ。実現すれば、好きな声優やキャラクターの声で話しかけてくれるClova搭載機器も夢ではない。


韓国LGが2019年のMWCで展示したスマートディスプレイの試作機

 もう1つ、気になるニュースを紹介しよう。先月の「MWC19 Barcelona」で韓国LG Electronicsが展示した、NAVERと共同開発中のClova搭載スマートディスプレイ試作機「ホログラフィック・スマートスピーカー」(仮称)は、中に有機ELディスプレイを載せて“ホログラム風”に動画や写真を表示できるというもの。好きなアイドルやアニメのキャラクターが表示できたら面白そうだ。“スマートディスプレイ”と呼ばれる製品の1つの方向性を見たような気がした。

【訂正:2019年3月19日18時27分更新 ※動画専用ブラウザの操作に関する記述を修正しました】

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