世界を視野に入れたIoTネットワーク「Sigfox」とは？：体当たりッ！スマート家電事始め（2/2 ページ）

さまざまなLPWA技術が登場する中、他にはない特長を持つ技術も登場している。「Sigfox」は国際ローミングサービスの実現を容易にするという。あのルイ・ヴィトンが旅行用スーツケースに装着するデバイストラッカーに採用した。

[山本敦，ITmedia]

GPS不要の位置情報取得も

　Sigfoxのモジュールを内蔵したデバイスは、「Sigfox Atlas」と呼ばれる機能により、GPSを使わなくてもおおよその位置情報をつかめるのが特長だ。Sigfox Atlasには仕組みと位置測定の精度によって3種類があり、基地局との通信を活用する「Atlas Native」を基本とし、Wi-Fii位置情報を利用する「Atlas WiFi」も提供中。Atlas Nativeの精度は1〜10キロメートルとかなり大ざっぱだが、Atlas Wi-Fiなら使用場所が都市部や屋内に限られるものの50〜200メートルまで精度が向上する。さらに年内にローンチを予定している「Atlras Bubble」では基地局から定期的に発信されるビーコン情報を併用し、さらに精度を上げるという。

　もう一つ、世界中のSigfoxネットワークを横断しながらデバイスの位置情報をトラッキングできるシームレス・グローバルローミングサービス「Sigfox Monarch」にも注目したい。同技術をいち早く活用した商品がルイ・ヴィトンから発売されている、旅行用のスーツケース専用のデバイストラッカー「Echo」だ。この製品は、Sigfox認証のほかに、Sigfoxネットワークが利用できる全地域の電波法認証を取得している。

ルイ・ヴィトンの旅行用スーツケースに装着するデバイストラッカー「Echo」

　使い方は簡単。スーツケースに装着、または中に入れておくと、飛行機の離着陸に合わせてスマホアプリに通知が届く。Sigfox Monarchによって各地域のSigfox周波数帯域に自動的に切り替えながらシームレスなグローバルローミングができ、現在は世界120空港での利用に対応しているという。さらにWi-Fiでの位置測位により屋内でもスーツケースの現在地が把握できる。利用頻度にもよるが、6カ月のバッテリーライフを実現していることから、万一のバッゲージロストが発生した場合にも荷物を取り戻せる可能性が高くなるという。

　海外ではSigfoxがコンシューマー向け家電機器に採用されるケースも増えている。フランスの大手ISPであるFreeは、サービスの契約者に提供しているセットトップボックス（STB）のメンテナンス用途としてSigfoxの通信モジュールを内蔵した。インターネット接続が確立していない初期セットアップ段階でのユーザー支援、あるいはネットワークにトラブルが発生した際の遠隔診断サービス、電源が切れたときのアラート、ホームセキュリティ機能との連携などに付加価値を加えることによって差別化を図った。

Sigfoxによるバックアップ回線を搭載するFreeのSTB「Delta」

　欧州ではIoTデバイスのホームセキュリティ用途へのニーズがとても高い。警報機の中には携帯電話用のGSM回線を使って中央監視システムに連携する製品も多いが、近年の窃盗犯はGSMジャマー（妨害電波発信機）を使って警報機を無効化してから、家屋に侵入して犯罪を働くケースが多発しているという。Sigfoxのバックアップ回線を組み込んでおけば、GSM回線が妨害された場合のバックアップとしてアンチジャミングの役目が果たせるのがメリット。既にサービスはフランス、スペイン、ポルトガルで始まっているそうだ。

　Sigfoxを搭載すると、家電機器をホームネットワークに接続する面倒な手間がいらなくなったり、機能にトラブルが発生した際のバックアップ回線としての役割も担えるという。宮下氏は、「家電メーカーのメンテナンスにかかる負担を軽減できるソリューションになる」と強調する。

Sigfoxの実証実験用センサー内蔵デバイス「Sens'it V3」

　KCCSではSigfoxの用途拡大に向け、アイデアを学生から募集するIoTアイデアコンテストを開催している。また本体に温湿度、照度、ドア開閉検知、振動検知、磁気、ボタンの6種類の機能と通信モジュールを組み込んだデバイスに各種データを参照できるクラウドサービスをパッケージにした実証実験用センサー内蔵デバイス「Sens'it V3」も販売中。宮下氏は「ぜひ多くの方に気軽にSigfoxで遊んでみてほしい」と話していた。