「幻滅期」は来るのか? RPAの未来を予言してみる:特集・RPAで仕事が変わる(3/3 ページ)
RPAが大きな注目を集めているが、ロボットが当たり前にいる時代の私たちの働き方は将来どうなっていくのか? 「新しい働き方」について具体的に考えてみたい。
RPAを「デジタルレイバー(デジタル労働者)」や「仮想知的労働者」などと表現している会社もある。文字通りRPAにバーチャルな労働者を生み出してもらい、彼らに定型業務を肩代わりさせるイメージだ。前述のように、RPAがAIと融合することによって、個々の業務をRPAで置き換える際の設定はさらに簡単なものになるだろう。部署に配属されたばかりの新人に、簡単な業務を教える程度になるかもしれない。
そうなった場合、私たち人間には非定型で付加価値の高い作業をすることが求められる。しかしそうする前に、まずはこの「デジタルレイバー」たちをうまく使いこなす必要がある。新人が配属されたのにほったらかし、あるいは自分が抱える定型業務を彼らに任せない上司がいるだろうか?
そうした新人、あるいはデジタルレイバーの力を最大限に引き出すためには、既存の業務をある程度修正するスキルも必要になる。RPAに限ったことではないが、ある業務をシステム化しようとして、現状の業務プロセスを精査してみると、さまざまな無駄や意味のないステップ、業務のバラつきが存在しているのが明らかになることが多い。
それをひもといて「あるべき業務プロセス」を描くのがシステムエンジニアやITコンサルタントの腕の見せ所といえる。RPAが普及し、誰もがデジタルレイバーという部下を与えられる時代には、そうした業務プロセスを考える力も社員一人一人に求められることになるだろう。部下を使うのがうまい上司・下手な上司がいるように、「あの人はRPAを使うのがうまい・下手」という評価も生まれてくるに違いない。
さらにRPAを使うのがうまいかどうかは、単純作業を任せられるかどうかだけの話ではなくなる可能性がある。
インドのIT大手インフォシスが展開するRPA「Infosys Nia」のグローバルヘッドを務めるアトゥル・ソンヤ氏(Atul Soneja)は、Forbesの取材に対して、「RPAは単純なオートメーションのツールではなく、価値を創造するツールになるだろう」と指摘し、「自動化をよりインテリジェントなものにする」のが彼らの方針であると解説している。つまりRPAによって空いた時間で人間が付加価値の高い作業をするのではなく、RPA自体が付加価値の高い作業をするようになるという発想だ。
例えばInfosys Niaの導入事例では、ある銀行において、税控除の手続きを自動化したケースが紹介されている。この手続きには複雑な例外処理が発生するため、これまで人間が時間をかけて確認していた。機械学習を活用して例外の発生予測と自動解決を行うようにしたことで、年間25万ユーロ(約3100万円)のコスト削減に加え、顧客満足度も向上したそうだ。
このようなRPA導入が一般的になったとき、「デジタルレイバーの上司」たる私たちに求められる思考は、さらに高度なものになる。「ロボットに任せられる定型業務はないか」ではなく、「ロボットに任せたらさらに付加価値が高まる業務はないか」という目線で社内を見渡すことが求められるためだ。部下であるRPAがどれだけ付加価値を生み出したかで、上司であるあなたの評価も変わってくる、そんな時代が来るかもしれない。
そこまで想像するのは、さすがに考え過ぎだろうか。しかしいま多くの識者が、企業内にAIを導入、定着させる際にRPAが潤滑油のような役割をしてくれるのではないかと予想している。これから到来するであろう、職場で人間とAIが共存する世界をいち早く体験するために、社内でRPA導入プロジェクトが始まった際には、ぜひ積極的に参加してほしい。
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