ジャンプとマガジンが「共闘」 異例のタッグ、実現の理由は?
集英社と講談社の少年誌が無料で読める若者向けの漫画サイト「少年ジャンマガ学園」が公開。異例のタッグが実現した理由は?
「週刊少年マガジンと週刊少年ジャンプはともに50年以上の歴史があるが、このような両誌の協業は初めて。個人的にもとてもワクワクしている」――「週刊少年マガジン」の栗田宏俊編集長は、こう話す。
集英社と講談社は4月8日、ジャンプやマガジンなど5媒体の連載作品150タイトル以上を一部無料で読めるWebサイト「少年ジャンマガ学園」を公開した。「若者に漫画を読んでほしい」という思いから生まれた期間限定のプロジェクトで、利用者は22歳以下を対象にする。
ターゲット読者が学生なので「漫画の学校」をコンセプトにサイトをデザインした。各作品の最新話は読めないが、長期連載作品やアニメ化した作品の原作を第1話から読み返せることがウリだ。
異例のタッグ、実現した理由は?
長年のライバルだった両誌による「共闘」はどのように実現したのか。一因として、スマートフォンの普及やエンターテインメントの多様化などで子どもたちが以前ほど漫画を読まなくなったという背景がある。栗田編集長は、「若者に漫画を読んでもらう施策として画期的。世間的にはジャンプ派、マガジン派と呼ばれる人たちがいると思うが、読み切れないほどのコンテンツがあるので全国の若者に読んでほしい」と思いを語った。
前代未聞の協業とあって、当初は両編集長も本当に企画が実現するのか半信半疑だったという。「週刊少年ジャンプ」の中野博之編集長は「最初は本当に実現するのか、マガジン側に断られるのでは、などと思っていた」とし、「マガジンはライバルであり仲間でもある。今回タッグが組めて本当にうれしい」と喜びを語った。
栗田編集長も最初は耳を疑った。「初めて企画の話を聞いたときは、『マジか』と思った。講談社に入社してから25年たつが、“打倒ジャンプ”でずっと仕事をしてきたので、最大のライバルであり宿敵だと思っていた。『ジャンプは良いって言ってんの?』と半信半疑で、どこかでこの企画は壊れてしまうのではないかなとも思っていた」とし、ジャンマガ学園の表紙を見ながら「圧巻の並び。人気作ばかりで読み応えがあるので、こんな雑誌の編集長なら楽でいいなと思う」と冗談交じりに語った。
今回のプロジェクトを主導した「ジャンプ+」の細野修平編集長と「マガジンポケット」の橋本脩編集長は共に「普段から意見交換をする仲なので、どちらからということはなく、雑談ベースでいつの間にかやることが決まっていった」と説明する。
「危機感からタッグを組んだというよりは、デジタル化が進んで今回のような企画が『できるようになった』のが大きい。10年前にこのような企画をしても実現できていないだろう。作家との調整など実務は大変だったが、特別なハードルはなかったと感じる」(橋本編集長)
海賊版サイト対策として出版社横断プラットフォームを求める声も一部であるが、細野編集長は「今回の企画は海賊版サイト対策とは直接関係はない。シンプルに若者に漫画を届けたいと思った」と説明。出版社横断のサブスクリプションサービスなどの提供も特に考えていないという。
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