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“羽根なしドローン”なぜ生まれた? ドコモ担当者が語るニコニコ超会議2019

「ニコニコ超会議2019」で、NTTドコモがプロペラのないドローンのデモ機を展示している。

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 NTTドコモが、超音波振動を活用して空中を移動するプロペラがないドローンのデモ機を「ニコニコ超会議2019」(4月27〜28日、千葉・幕張メッセ)に展示している。なぜ“羽根なしドローン”を開発したのか。担当者に聞いた。

ドローン
NTTドコモの山田渉さん(先進技術研究所 社会センシング研究グループ)

なぜ“羽根なし”なのか?

 披露したのは、屋内向けに開発した飛行船型ドローン。ヘリウムガスで満たされた風船の浮力で浮遊し、本体表面に取り付けた「超音波振動モジュール」が空気ポンプのように動作、推力を生み出して空中を移動する。

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“羽根なしドローン”

 超音波振動モジュールは、村田製作所が市販する部品を組み合わせて独自に設計した。NTTドコモの山田渉さん(先進技術研究所 社会センシング研究グループ)は「もともと市販されているモジュールは、デバイスを冷やすファンの役割を果たすものです。超音波振動で生み出される風を空中移動に活用したところに工夫があります」と説明する。

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「超音波振動モジュール」を風船表面の左右に設置
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風船の下部に受信機を搭載。いまはリモコンで操縦する仕組みだ

 空撮などに使われるドローンは、プロペラを複数備える「マルチコプター」が一般的によく知られている。しかし、プロペラ部分が人やモノにぶつかると、けがや破損につながる恐れがある。羽根なしドローンは、人が触っても安全な微小な振動で風を起こしている。人とコンピュータの関わり合いや相互作用に関する研究領域である「Human-Computer Interaction」(HCI)を研究する山田さんは、羽根なしドローン開発の理由を次のように話す。

 「プロペラのあるドローンが近くに来ると人間は恐怖心を感じますよね。例えば空撮や自撮りなんかも人間とドローンの間に生まれるコミュニケーションといえますが、これらのコミュニケーションの良い在り方を見つけたいと思っています」(山田さん)

 羽根なしドローンの成果は、5月4日に英国で開催されるHCI分野における著名な国際会議「The ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systems(CHI 2019)」で発表する。商用化の有無は学会発表後の反応を見ながら検討する。

 現時点では、想定される活用シーンとして、機体に搭載したカメラで撮影した映像と画像解析技術を組み合わせた監視・警備の効率化や、ドローン本体にプロジェクションマッピングで映像を映し出す空間演出などを考えているようだ。

 いまはリモコンでドローンを操作する仕組みだが、「自律飛行の実現自体は難しくない」という。「将来的には、スマートスピーカーと組み合わせて音声操作したり、カメラで撮影した映像から迷子の子供を見つけて道案内するといったこともできるようになると思います」(山田さん)

 さまざまな可能性を秘める羽なしドローンだが、課題もある。本体が風船なので、風に弱いのだ。ニコニコ超会議の会場も空調が効いていたが、山田さんは「風に弱いのは事実です。会議室などは大丈夫ですが、ここ(超会議)ではうまく飛びません。超音波振動のパワーを強くするなど改善の余地はあります」と話す。連続飛行時間については「約1〜2時間と公表していましたが、使い方や風船本体の大きさなどでも大きく変わってきます」と説明した。

 ドローンは無人航空機のことで、プロペラを備えるマルチコプターやクアッドコプターはドローンの一形態にすぎない。今後は羽根がないドローンを目にする機会も増えていきそうだ。

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