JR東日本を利用していると、駅名や路線表示のフォントは基本的に白地ベースで黒文字、もしくは黒字に白文字の表示で扱い、プラットホーム番号や路線名のすぐ横にそれぞれのラインカラーを表示することで区別しているのが分かる。巨大ターミナルの新宿駅では、他社路線への案内、出入口・乗り換え口はイエローに黒の文字で目立つように扱い、JR東日本内の路線案内とはっきり区別できるようにしている。番線が多く構内も広い大型ターミナル駅では判別しやすく有効な方法だ。
JR東日本新宿駅西口側の地上側コンコース付近では、数多い番線と乗り換え路線のためにプラットホーム番号の数字を大きく表示している。番線と行先方面の中間にラインカラーを縦線で太く扱うことで、コンコースを横断するときに、目的の乗り換え路線を認識しやすくする工夫がなされている
こちらは渋谷駅のプラットホーム上にあるメインの駅名表示。日本語と英語の表記はウェイトの太いフォントでわかりやすいものの、前後駅の英語表記と中国語簡体字、ハングルはウェイトが細いように思う。もうすこしウェイトを太くし、フォントのジャンプ率を変更することで、遠距離からの視認性はより良くなるだろう
鉄道施設はフォント探検の宝島
首都圏の鉄道施設を探索してみると、デザインの豊富さと複雑なしくみに改めて驚かされる。同時に、運行管理や保守という点からだけでなく「フォントやデザインのメンテナンス」という点でも考えさせられることが多い。
ラインカラーは共通のデザインコードとして異なる鉄道会社間でもある程度統一されているし、「DT」「JY」「G」といった略称アイコンも浸透してきた。ただ、同じ路線でも設備によってフォントが統一されていなかったり、後付けの補助表示のほうが目立っている場合もある。ただしこれは現場での努力による一時的な回避策なので、今後は公共インフラとしてのフォントや色彩計画の統一感、言語を問わない読みやすさと見やすさが、さらに進化することを期待している。
最後に、地下鉄日比谷線広尾駅のプラットホームにある乗降ドア前のフォントとデザインを紹介する。デザイン上での工夫と苦労がよくあらわれている労作なので、この前に立つといつもデザイナーの方々に感謝の気持ちが湧きおこる。フォントの大きさや色、ホーム面におけるバランスの美しさを感じると同時に、「Car」と「No.」は1行にしたかっただろうなあ。でもユニバーサルデザインの見地からピクトグラムの認知を優先して2行にしたのだなあ、などという思いを巡らせながら、私は日常生活でいつも「フォントとデザイン」の旅をしているのだ。
次回もフィールドに出かけて探したフォントやデザインの探検をしてみよう。
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