ソフトバンク孫社長「日本復活のシナリオは、RPA+AIによる生産性向上」
米国トップシェアを誇るRPAツールのイベントにソフトバンクの孫正義社長が登壇。RPAとAIを掛け合わせた労働生産性の向上とは。
「日本の労働生産性はRPA(ロボットによるプロセス自動化)とAI(人工知能)で上がる。人間は(生まれた余剰時間で)創造性を発揮できるだろう。これが日本復活のシナリオだ」――ソフトバンクグループの孫正義社長(兼会長)は6月13日、RPAツール大手の米Automation Anywhereが都内で開いたイベント「IMAGINE TOKYO 2019」でそう話した。
Automation Anywhereが手掛けるのは、PCを使った事務作業を自動化する法人向けのRPAツールだ。米国のRPA市場でトップシェア(米調査会社・Forrester Research調べ)を誇り、米Googleや米Cisco、米General Motorsなどにも供給されている。
Automation Anywhereは2018年3月に日本法人を設立。11月にはソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)から3億ドル(約325億円)の出資を受けた。
SVFはAIを事業の中心とする世界各国のユニコーン企業(評価額が10億ドル以上、非上場のベンチャー)への出資を進めてきた。Automation Anywhereを出資先に加えた理由は、RPAの分野にもAI技術を積極的に取り入れる同社の方針がソフトバンクのビジョンと一致したからと孫社長は説明する。
「従来のRPAは人間の単純作業を置き換えるだけだった。RPAにAIを取り入れることで、ロボットが同じキーを押すだけでなく、学習内容から別のキーを押せるようになる。RPAの分野でもAIを使った仕組みを強化すべきだ」(孫社長)
Automation AnywhereのRPAツールは自然言語処理や機械学習を使うことで、解像度の低い文書の文字を読み取るといったAI特有の非構造化データ解析(画像・音声処理など)に強みがある。
イベントの途中、孫社長は「(Automation Anywhereへの追加出資について)昨日、話をした」と語った。規模などは明らかになっていない。
RPAを使った労働生産性の向上は急務
日本は労働人口の減少によって、海外に対する競争力や生産性が衰えているとの見方が強い。孫社長は「日本政府が移民政策などの門戸を広げるべき」と持論を述べつつ、「生産性を向上させる解決策の一つとして、RPAの導入が有効だ」と話す。
「労働人口が減っている。さらに昨今の働き方改革によって、1人当たりの労働時間も減っている。これは急に改善できるものではない。RPAによるデジタルワーカー(bot)なら24時間365日働ける。人間に比べて5倍の労働人口を提供でき、生産性も倍になる。そんな結果が自社の導入事例で見えてきた」(孫社長)
ソフトバンクは18年8月の決算発表会で、約2000件のRPA・AI関連プロジェクトが進行中としていた。これまで約2000時間かかっていた業務が約2時間に短縮されるといった事例が社内でも生まれているという。
孫社長は、RPAとAIを組み合わせて1人当たりの生産性を向上させることで、より新しい感動や興奮を覚える業務に人員を割くという方針を強調。ソフトバンクでは、20年度末までにRPAの導入を強化することで、従業員4000人分の業務をRPAに代行させて業務効率化を図り、高付加価値業務への配置転換を促進する考えだ。
【訂正:2019年6月14日午前11時40分 初出時、「従業員4000人を高付加価値業務に従事させたい考えだ」としていましたが、従業員4000人分の業務をRPAに代行させるという旨に訂正しました。】
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