「僕と契約してデータサイエンティストになってよ!」 分析少女ありさ☆アリスの悲劇:マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(4/4 ページ)
未経験からデータサイエンティストを目指した「分析少女」に起きた悲劇とは。一部の怪しいデータサイエンティスト養成スクールへの警鐘を鳴らす物語。
「高収入」「手に職」「データサイエンティストやエンジニアを目指せ」とアピールする一部の怪しい人たちは、アイドルをスカウトするふりをして金を巻き上げる悪徳プロデューサーみたいなものです。
少しネットを調べると、そうしたデータサイエンティスト・プログラミングスクールにおける好意的なブログや口コミが見つかりますが、アフィリエイト目的の記事という可能性も考慮しましょう(繰り返しますが、一部のスクールです)。
また、IT業界やエンジニア同士の横のつながりもあるので、怪しい運営元のうわさはすぐ広まります。実際にスクールに通った人から話を聞いたり、有志の勉強会で知り合った人から信頼できるスクールを紹介してもらうなど、手間を掛けて情報収集しましょう。よく運営企業がセミナーを行ったりしますが、運営者やネットからの情報は参考程度にとどめておくべきです。
そもそもなぜこのようなビジネスが成立するのでしょうか。実はありささんが転職したのは、AI開発を受託する会社でした。そして発注元は従来型のシステム開発と同じく、人数を集めて完成させる方法をとりました。
正直、AI開発は人を増やして解決するような問題ではありませんが、開発会社は発注元の要望に応じてありささんのような人材を投入していました。なぜなら「1人が1カ月働けば◯万円支払う」という人月契約なので、下請け企業は人を集めて現場に送ればもうかるのです。
しかし、人集めには限界があります。特にデータサイエンティストはそう簡単には集まりません。そこでスクールを開設してイメージ戦略を行い、あまり業界事情に明るくない人たちと“契約”を結んで現場に送りこむのです。
そもそも発注元はなぜそんな手法で開発をするのか? と思うかもしれません。スキルを見定める能力がなく、人数を集めれば完成すると考える発注元は、“自称”データサイエンティストを集めればいいと誤解しています。下請け先も本人のスキルアップより、人集めと単価と派遣先を優先します。
「あたしって、ほんとバカ」と後悔する前に、こうした業界構造もあることを理解しておきましょう。
そもそもおしゃれなオフィスで有名なサービスを開発している高収入なデータサイエンティストは、そのほとんどが学生時代からプログラミングを学んでいた理系大卒です。未経験者が3カ月スクールに通っただけでは、データサイエンティストにも魔法少女にもなれません。
エピローグ:予感
では、どうすればありささんを助けられるのでしょうか。魔法の力で運命を書き換えて、スクールと契約せずデータサイエンティストにならない世界にしましょう(フィクションなので)。しかし、われわれが生きる世界には奇跡も魔法もありません。「うまい話は信用しない」「安易に契約しない」という交番に貼られた啓発ポスター並みの意識を心がけましょう。
こうしてデータサイエンティストにならなかった世界を生きるありささんですが、何か物足りなさを感じています。将来への不安は、いまだに消えていないのです。そんなとき、ふとこんな広告を目にしました。
「僕と契約してRPAエンジニアになってよ!」
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