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順天堂大、認知症の早期発見に「IBM Watson」活用へ 「同じ話を繰り返す」「表情の変化が乏しい」など兆候を検知

順天堂大が、日本IBMなどと共同で行っている、AIを医療に役立てるプロジェクトの詳細を発表。人の表情や振る舞いを「IBM Watson」で分析し、認知症を発症しているか否かを判定するシステムを開発中という。「パーキンソン病を患うと認知症になりやすい」という研究結果が出ているため、まずはパーキンソン病患者を分析対象とする。

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 順天堂大学は7月10日、日本アイ・ビー・エム(IBM)など6社と共同で行っている、AI(人工知能)を医療に役立てるプロジェクトの詳細を発表した。人の表情や振る舞いを「IBM Watson」で分析し、認知症の兆候を検知するシステムを7月から共同開発中という。「パーキンソン病を患うと認知症になりやすい」という研究結果が出ているため、まずはパーキンソン病患者のオンライン診療に導入する予定。将来的には、健康な人の発症リスクも分析できるようにする。

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順天堂大が日本IBMなどと提携し、認知症の兆候を検知する取り組みを行う

音声対話を通じて認知症を検知

 まず、遠隔地にいるパーキンソン病患者がタブレット端末でWatsonと会話し、体調を報告できるシステムの実用化を目指す。Watsonが音声で体調に関する質問をし、患者がそれに答える仕様を想定する。このシステムを通じて得た、パーキンソン病患者の表情や会話内容などのデータを、クラウド上に集約してバックエンドで分析。認知症に特有の症状のデータと照らし合わせることで、発症の有無などを検知する計画だ。

 認知症のリスクを算出する機能の開発には、機械メーカーのグローリー(兵庫県姫路市)が協力。「笑った時の歯の見え方」などの細かな表情を画像認識によって分析し、患者の感情を数値化する技術を提供する。

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グローリーの画像認識機能を活用する

 これらの機能により、医師はパーキンソン患者の体調を定期的にモニタリングしながら、「表情の変化が乏しくなった」「同じ話を繰り返すようになった」といった認知症の兆候を自動的に発見できるようになるという。

 発症がみられた患者やリスクが高い患者には、認知機能を改善するトレーニングなどを行い、予防と早期回復をサポートしていく。

「ぼーっとしている」「生気がない」をAIで把握

 順天堂大の服部信孝教授(医学部長・医学研究科長)は「認知症の患者は、発症しないと病院に来ない。この課題を解消するため、まずは認知症に移行する確率が高いパーキンソン病患者を分析し、早期の発見・治療につなげる。『ぼーっとしている』『生気がない』といった変化を、AI(Watson)を活用して的確に追えるようにしたい」と語った。

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順天堂大の服部信孝教授(医学部長・医学研究科長)

 同じく大山彦光准教授(医学部 神経学講座)は「オンライン診療システムを構築する上では、医師が診察時に患者と話す内容をデータ化し、Watsonに大量に学習させる。臨床現場では、体調を聞くだけでなく『旅行はどうでしたか』『娘さんの結婚式はどうでしたか』といった雑談を混ぜると喜んでもらえるため、こうした話術も学習させたい。これから実証実験を行い、会話の精度を高めていく」と意気込んだ。

大手飲料・金融事業者も参加

 このプロジェクトには、日本IBMとグローリーの他、キリンホールディングス(HD)、日本生命保険、三菱UFJ信託、三菱UFJリースが協力。このシステムを使った商品開発などを行う予定だ。

 具体的には、キリンHDは、ホップの苦味成分が認知機能の改善に効果があるかを検証する。日本生命保険は、認知症の予防につながる保険商品の開発を検討する。三菱UFJ信託は、認知症の発症リスクが高い顧客に対し、発症した場合の財産管理方法などを事前に聞くサービスを検討。三菱UFJリースは、このシステムが実用化した場合に代理店となり、医療機関にリース形式で提供していく。

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