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イギリス紙幣にアラン・チューリング氏 コンピュータやAIの父、同性愛で有罪の過去も
第二次世界大戦中にナチス・ドイツの暗号解読に貢献した数学者のアラン・チューリング氏が、新50ポンド紙幣の絵柄に選ばれた。最終候補者もそうそうたるメンツ。
英中央銀行のイングランド銀行は7月15日(英国時間)、新しい50ポンド紙幣の絵柄に、第二次世界大戦中にナチス・ドイツの暗号解読に貢献した数学者のアラン・チューリング氏を採用すると発表した。2021年までに発行を始めるとしている。
約1000人の候補者、約23万件の推薦の中から選んだという。イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は「今日のわれわれの生活に大きな影響を与える、傑出した数学者だ」と選出理由を話している。
アラン・チューリング氏は、ナチス・ドイツの暗号機「エニグマ」が生成する暗号の解読装置「Bombe」の開発や、機械の知性を問う「チューリングテスト」の考案など、初期のコンピュータ科学に関わる業績で有名。同性愛者であることが理由で罪に問われ、化学的な去勢を受けることを条件に刑務所入りを避けた。その2年後に自殺。41歳の若さだった。
2000年代に、チューリング氏に対する当時の扱いについて謝罪するよう英国政府に働きかける動きがあり、09年に政府が正式に謝罪。13年には死後恩赦が認められた。17年には、同性愛で有罪判決を受けたまま亡くなった男性数万人に死後恩赦を与える法律が施行。同法は「チューリング法」と呼ばれている。
チューリング氏の他に紙幣の最終候補者となったのは、以下の計11組。
- メアリー・アニング氏(古生物学者、化石収集)
- ポール・ディラック氏(物理学者、量子力学に貢献)
- ロザリンド・フランクリン氏(化学者、DNA構造のX線撮影)
- ハーシェル兄妹(天文学者、天王星の発見)
- ドロシー・ホジキン氏(生化学者、ペニシリンの構造決定)
- チャールズ・バベッジ氏(計算機科学者、解析機関の考案)とエイダ・ラブレス氏(バベッジ氏の講演をまとめた著作)
- スティーブン・ホーキング氏(理論物理学者、ブラックホールに関する理論)
- ジェームズ・クラーク・マクスウェル氏(理論物理学者、マクスウェルの方程式)
- シュリニヴァーサ・ラマヌジャン氏(インド人の数学者、ランダウ・ラマヌジャンの定数)
- アーネスト・ラザフォード氏(物理学者、原子模型の提唱)
- フレデリック・サンガー氏(生化学者、タンパク質のアミノ酸配列決定法とDNAの塩基配列決定法)
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