琉球銀行、電話システムをクラウドに移行 定年後に復帰した62歳が担当 「まだできる」の声に奮起(2/3 ページ)
琉球銀行が、オンプレミス環境に構築していた電話対応のシステムを、7月からクラウド型の「Amazon Connect」に全面移行。店舗にかかってくる電話を全て同システムに転送し、自動応答で用件を聞いた上で、オペレーターが対応する仕組みを取り入れた。構築したのは、同行を定年退職後に再雇用された62歳の喜納(きな)兼次郎さん。喜納さんに、導入の背景と経緯を聞いた。
AWSベースのAmazon Connectとは
Amazon Connectは、Amazon Web Services(AWS)がベース。電話を録音してクラウド上に保存できる他、AWSの文章読み上げサービス「Amazon Polly」と連携し、「○○をご要望の方は1番を押してください」といった音声を自動で流すことも可能だ。
顧客が押した番号に応じて、本人確認など次のステップに案内する仕組みは、フローチャート形式で構築できる。CRM(顧客管理関係システム)などと連動して、電話の主との取引履歴を呼び出した上で、最適なオペレーターの端末に対応を振り分ける機能も持つ。
喜納さんはこの仕組みをうまく使うため、店舗とは別に、豊富な知識・経験を持つ定年後人材をオペレーターとして集めたコールセンターを新設。顧客から来た電話は全て、店舗ではなく同センターにつながり、最初はオペレーターではなく自動音声が対応する仕組みを採った。
自動音声では、要望に応じた番号を押すよう案内。並行して、過去の顧客対応のデータベースから相手の情報を取得し、「どんな人が何を求めているのか」が分かるようにした。一連の情報は、オペレーターのPCやスマホにプッシュ通知として表示する他、Amazon Connectの「Whisper」(ささやき)機能も活用し、オペレーターのヘッドセットに音声として流す仕様にした。
これらの手順によって、オペレーターは顧客の属性を把握し、必要な資料などを準備した上で電話に出られる。ただでさえ経験豊富な定年後人材が丁寧に対応するので、「質問の7〜8割は解決し、支店につなぐ機会をかなり減らせます。これにより、行員は店頭での接客の質をより高められます」(喜納さん)という。
顧客が支店につなぐことを希望した場合は、対象部署の行員が参加するWorkplace by Facebookのグループチャットに、先方の氏名と要望をテキストで送信する。行員は内容に応じて、最適と考えられる人に割り振ることで、電話対応の質も高めている。
わずか2〜3週間で構築
喜納さんは「従来は、行員の経験によって電話対応に差があり、顧客から『支店によって言っていることが違う』とお叱りを受けることもありました。ですが、今回の仕組みによって、質をかなり均一化できたと考えています」と自信を見せる。
この仕組みの構築に要した期間は、わずか2〜3週間程度。過去にプログラミング経験があったとはいえ、かなりの速さだ。「まだまだできる」という、復帰をすすめた伊禮さんの見立ては的中した。
だが、琉銀内には「本当は喜納さんが担当したのではなく、システムを外部のベンダーから買ってきたのではないか」と誤解する人や、「IT部門ではなくユーザー部門の所属なのに、どうして行内のシステム構築をやるのか」と疑問をもつ人もいたという。
一部にこうした意見があった他、運用ルールの策定やテスト、承認などに時間がかかったため、喜納さんが琉銀オリジナルにカスタマイズしたAmazon Connectは、完成から導入までに約1年半もの月日を要してしまった。
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