アスクル「少数株主から多くの支持」と主張 プラスとレオスの「ヤフー支持」受け
経営を巡りヤフーと対立しているアスクルが「当社少数株主から現経営体制へ多くの支持を得ている」とコメント。プラスやレオスといった、ヤフーの方針に賛同する少数株主が出てくる中で、「多くの機関投資家から一般の株主まで、応援の声をいただいている」とけん制した。
アスクルは7月29日、親会社ヤフーと経営などを巡って対立している件で、「当社少数株主から現経営体制へ多くの支持を得ている」とのコメントを発表した。ヤフーは、近年の業績不振などを理由に、アスクルが8月2日に開く定時株主総会で岩田彰一郎社長らの再任に反対する議決権を行使。第2位株主のプラス、少数株主のレオス・キャピタルワークスなど、ヤフーの方針に賛同する株主も出てきた。こうした動きに対し、アスクルは「多くの機関投資家から一般の株主まで、応援の声をいただいている」とけん制した。
アスクルは、岩田社長が率いる現体制を支持している機関投資家の意見も紹介。その投資家は「アスクルの2018年5月期、19年5月期業績は物流センターでの火災、配送料金の大幅引上げ(宅配クライシス)といった予測し難い外部要因が大きく影響した。岩田社長でなければ、さらに長期的に業績を低迷させていた可能性が高いと判断している」「『株価低迷の要因は業績不振である』との意見は避けがたいが、その責任を岩田社長のみに負わせることは一方的な意見」などとコメントしているという。
アスクルは「業績回復基調にある」と主張
アスクルでは17年2月に埼玉県三芳町の物流センターで大規模な火災が発生し、特損を計上。同年5月期の営業利益(連結、以下同)は前期比4.1%増の88億6500万円だったが、最終利益は80.7%減の10億1400万円に落ち込んだ。岩田社長は、同年7月の決算発表の場で「19年5月期はV字回復」「過去最高益を目指す」といった目標を掲げた。
しかし18年5月期は、新設した物流拠点の維持コストなどがかさみ、営業利益が前期比52.7%減の41億9200万円に低下。サービス復旧で最終利益は前年比約4倍の46億9300万円まで回復したが、岩田社長は一連の目標を撤回した。続く19年5月期は、営業利益は7.8%増の45億2000万円、最終利益は90.7%減の4億3400万円で、火災前の水準には至っていない。
ヤフーは、こうした点を列挙し「『低迷する業績への責任』が岩田社長らの再任に反対する最大の理由」「岩田社長の業績目標達成のための指導力、実行力には疑問を持たざるを得ない」としている。
これに対し、アスクルは「(当初は)19年5月期のV字回復を掲げたが、18年5月期に発生した宅配クライシスの影響を受けたため、結果として回復が1年遅れることになった」と説明。20年5月期にあらためてV字回復の目標を掲げており、「現時点では順調に進行している」と強調する。
同社は「物流センター火災、宅配クライシスといった課題に対して岩田社長をはじめ現経営陣が適切に対処し、V字回復を目指せる状況にまで早期に回復した事実からすれば、業績回復基調にある今の段階で『低迷する業績への責任』を追及されることは適切ではない」と主張している。
「アスクル株のパフォーマンスは、ヤフー株を大きく上回る」
またアスクルは、ヤフーが「日経平均の年平均成長率が約3年間(16年7月1日〜19年7月10日)で17ポイント上昇している一方、アスクルの株価の年平均成長率(CAGR)は22.2ポイントの減少になっている」「低迷する業績を反映してアスクルの株価も低迷している」と主張していることにも反論。
ヤフーが取り上げた期間は「17年2月の物流センター火災、18年からの宅配クライシスの期間を主要部分としており、大変意図的な期間設定だ」と批判した。その上で、ヤフーと資本・業務提携を結んだ12年5月をスタートラインとし、両社の株価を比べると「アスクル株のパフォーマンスは、ヤフー株を大きく上回る」とも強調している。
株価上昇は「20年5月期の業績計画への支持」と反論
ヤフーは、同社が岩田社長に退陣を求めると発表した7月17日以降、アスクルの株価が上昇していることを挙げ、「新しい経営体制の下での抜本的な経営改革を通じた業績回復と企業価値向上への期待が、株式市場に結果として現れている」とも主張している。
これに対し、アスクルは「当社が19年7月3日に発表した20年5月期の業績計画への支持と、現在順調に推移している事業計画への期待と捉えている」と反論。ヤフーが岩田社長らの再任反対のみを主張し、「抜本的な経営改革」の具体的な提案をしていないことを指摘している。
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