Facebook、脳直結出力システムに一歩近づく UCSFとの共同研究論文発表
Facebookが「F8 2017」で発表した非侵襲的脳直結コミュニケーションシステムの進捗を発表した。侵襲的方法ではあるが、脳で考えたことのほぼリアルタイム表示に成功した。
米Facebookは7月30日(現地時間)、2017年のF8で発表したBCI(ブレインコンピューターインタフェース)構想の進捗について発表した。
構想を推進していたレジーナ・デューガン氏は退社したが、Facebook Reality Labs(FRL)はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)と共同で研究を続けている。この研究の論文が同日、Nature Communicationsで公開された。
「Real-time decoding of question-and-answer speech dialogue using human cortical activity」(人間の皮質活動を用いた質疑応答音声対話のリアルタイム復号)というタイトルで、BCIシステムを使って脳で考えたことをスクリーン上に表示する方法を説明している。
この研究では、てんかんの治療を行っている3人の患者の脳に電極を埋め込んで実験を行った。患者は、例えば「どの楽器の演奏を聴きたいですか?」などのシンプルな質問に対してあらかじめ用意してある6つの答え(ピアノ、バイオリン、ギター、ドラム、シンセサイザー、何も聞きたくない)を脳で選ぶ。この実験では、患者はほぼリアルタイムで回答できた。
この実験のシステムは現在、非常に限られた単語しか認識しないが、最終目標は、1000語の語彙を17%未満のエラー率で毎分100語のリアルタイムデコードを実現することという。
また、この実験では脳に電極を埋め込んでいるが、研究成果はデューガン氏が提唱した非侵襲的なウェアラブル機器の開発に役立つとしている。
非侵襲的な方法の探求のため、FRLはワシントン大学医学部やジョンズ・ホプキンズ大学などと協力しており、現在は近赤外線光を採用したシステムを開発している。
Facebookは将来的にはARメガネにBCIを統合し、パソコンやスマートフォンを使わずに目の前に広がる世界とシームレスに繋がり、脳で考えるだけでコミュニケーションできるようにしたいという。「10年後、脳から直接タイピングする能力が実現しているかもしれない」としている。
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