ヤフー、またアスクル批判 騒動の要因は「岩田社長の保身」 第三者に株式を譲る可能性も示唆
ヤフーが、経営などを巡って対立している件で見解を発表。アスクルが株式の売渡請求権の行使を示唆していることについて「岩田社長の保身」と批判した。ただ、株式の譲渡先の候補によっては、交渉に応じる可能性も示唆した。
ヤフーは7月31日、子会社アスクルと経営などを巡って対立している件について、同日時点での見解を発表した。アスクルはヤフーとの資本業務提携の解消に向け、8月1日に取締役会を招集し、株式の売渡請求権の行使を議論する予定だが、ヤフーはこの動きについて「アスクルの岩田彰一郎社長の保身」と批判。「アスクルの企業価値向上には、提携の継続が最も現実的な道筋だ」と主張した。ただ、株式の譲渡先の候補によっては、交渉に応じる可能性を示唆した。
アスクルとヤフーは、2012年4月に資本・業務提携を締結し、同年10月にECサイト「LOHACO」の共同運営を開始。15年にはヤフーによる出資比率を約45%に引き上げた。だがヤフーは今年7月25日、近年の業績不振などを理由に、アスクルが8月2日に開く定時株主総会で岩田社長と独立社外取締役3人の再任に反対する議決権を行使した。アスクルはこれに対し「支配株主の横暴だ」などと主張し、提携解消を示唆。両社は対立を深めている。
アスクルの動きは「株式会社制度の根幹を否定している」
ヤフーは今回、株主総会を巡るアスクルの意見に触れ、「株式会社のガバナンスでは、株主総会が最高の意思決定機関であり、議決権は株主の最も重要な権利だ。株主の議決権行使がないがしろにされるならば、上場企業では、実質的に取締役会が最高の意思決定機関となり、株式会社制度の根幹を否定することになる」と説明。議決権行使の正当性を説いた。
また、「上場企業としてアスクルの経営の独立性を尊重することと、株主の議決権行使とは次元が異なる問題。岩田社長による主張は、株主総会が取締役の選任・解任を通じてガバナンスを効かせる株式会社制度の根幹を無視し、保身のため社長続投を正当化しようとするものだ」と、岩田社長を批判した。
提携解消はアスクルの企業価値を毀損する
ヤフーはこの他、アスクル経営層に提携解消を提言した独立社外取締役らにも言及。「ヤフーとアスクルのシナジーをなくすことは、LOHACOの成長と黒字化を困難にする経営判断と言わざるを得ず、アスクルの中長期的な企業価値を著しく毀損(きそん)する」と批判した。
「株主共同利益の最大化の観点からも、岩田社長はもちろん、契約解消を求める独立社外取締役3人についても信任はできない」としている。
売り渡し先によっては交渉に応じる?
アスクルによると、両社の提携契約には「イコールパートナーシップの精神(を尊重する)」「アスクルは上場会社としての独立性を維持する」といった文言が記されており、重大な違反があった場合は、アスクルはヤフーに株式の売り渡し請求権を行使できるという。
両社は、この点でも解釈が食い違っている。アスクルは今回のヤフーの判断を契約違反と捉え、売り渡し請求権の行使に動いているが、ヤフーは「業務・資本提携契約の違反に該当しない(売渡請求権が発生していない)ことは明らか」と判断している。
ただ、ヤフーは今回、「もしも『アスクルの企業価値をヤフーより向上できる株式の譲受希望者がいる』とアスクルの取締役会から打診されれば、その第三者の話を伺うことを拒否するものではない」とコメント。売り渡し先によっては交渉に応じる構えを見せた。
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