「社長が辞めて大丈夫か」「ヤフーはLOHACOを奪うのか」 アスクル株主総会で質問飛び交う(2/2 ページ)
アスクルが定時株主総会を開催し、取締役10人の選任議案を付議。筆頭株主のヤフーと第2位株主のプラスが、岩田彰一郎社長と独立社外取締役3人の再任に反対の議決権を事前に行使したため、株主総会の終了をもって4人は退任した。株主と取締役の質疑では、アスクルの今後について多くの質問が出た。
戻りたい気持ちはない
終盤には「体制が変わっても、業績改善がみられなかった場合などに、岩田社長が復帰する可能性はあるのか」など、今後の身の振り方を問う声が多く出た。
これに対し岩田社長は、「本当に必要という声がない限りは。私自身が経営に戻りたい、社長をやりたいという気持ちはない」と明言した。
岩田社長らの退任後、しばらくは独立社外取締役がいない体制になるが、これについて同社長は「異常な事態であり、早く解消しなければならない。(対応策を議論するために)臨時株主総会が開かれるだろう」と語った。
岩田社長に温かい拍手
質疑が終了し、取締役選任議案の決議が始まると、退任が事実上決定していたにもかかわらず、岩田社長の採決の場面では個人株主から大きな拍手が沸き起こった。同じく独立社外取締役3人の採決でも拍手が起き、株主からの信頼をうかがわせた。
岩田社長は、自身を含む4人の採決結果を「過半数の採決を得られなかったので、否決されました」と淡々と読み上げた。
一方、続投が決定したものの、輿水取締役・小澤取締役への拍手はわずかだった。欠席した今泉氏に対しては、一切の拍手が起きなかった。
立場にしがみつくつもりはない
株主総会の終了後、岩田社長は記者会見を開き、「不本意だが、本日をもって経営から退く」「立場にしがみつくつもりはない。アスクル経営陣との関わりは全て終わり」と話した。
2社の議決権行使によって退任に追い込まれたことに対しては、「日本社会では、支配株主の持つ力は圧倒的で、(子会社のトップが)自分たちの意に沿わない場合は飛ばして(=排除して)しまうのが現実だ。本当にそれが資本の論理でいいのか」と、釈然としない心情を吐露した。
採決の際に株主から拍手があったことに話が及ぶと、岩田社長は目にうっすらと涙を浮かべながら「既に結果が決まっているセレモニーであっても、一生懸命拍手をし、精いっぱい(支持を)表明してくれた」と振り返った。
岩田社長は、事業家としての今後の身の振り方については明言を避けたが、「アスクル経営陣との関わりはなくなるが、これからは少数株主として、アスクルという会社に危ないことが起きないよう、外から十分注視していきたい」と語った。
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