ハイレゾ音源の認知や普及の起爆剤になるのか?
非圧縮のハイレゾ音源サービスという意味では、e-onkyo、mora、OTOTOYなどが既にサービスを提供しているが、こちらは従来型のダウンロードサービスだ。楽曲、アルバム単位での課金が発生し、一部のレーベルを除きメジャー系を中心に「高音質」を理由に、物理メディア(CDDAなど)並みかそれ以上の値付けを行っており、オーディオマニア向けサービスの域を脱していない。アナログのマスターテープから再マスタリングを実施するなど、それ相応の付加価値を持たせた上での値付けである点は、考慮する必要はあるが……。
加えて、ハイレゾ音源を本来の音質で楽しむためには、専用の機器やソフトウェアが必要になるなど、カジュアルリスナーにとっては、価格問題以上に高いハードルが存在する。例えば、Amazon製スマートスピーカーの「Echo」シリーズには、「Echo Sub」と呼ばれるサブウーファー製品が存在する。これに高音質版である「Echo Plus」をステレオペアにしてリスニング環境を構築するとそれだけで、5万円を軽くオーバーする。ちなみに、Echo PlusやEcho Subが、Amazon Music HDに対応するのかどうは現時点では不明だ。
また、普及の鍵とも言える、モバイルでの再生が可能となるような環境整備が進むのかどうかも未知数だ。アマゾン側が、再生環境の整備等にどこまでコミットするのかも現時点では分からない。現状の携帯電話事業者が提供するLTE系のサービスでは、ハイレゾストリーミングの再生で著しく「ギガが減る」ことになり非現実的な話であろう。例えば、Apple MusicのAAC形式のビットレートは、256Kbpsだが、これが24bit/48KHzの楽曲になると、2300Kbps以上に跳ね上がる。つまり、約9倍の「ギガを食う」計算になる。モバイルでの提供は、5Gが実用段階に入ってデータプランがもっと低価格になった頃が現実的になるのではないか。
月額1980円でハイレゾが聴き放題となるAmazon Miusic HDがハイレゾ音源の認知や普及の起爆剤になるかどうかは、蓋を開けてみなければ分からない。もちろん、圧縮品質では飽き足らないマニアにとっては、ハイレゾ音源が聴き放題になるのは喜ばしいことだが、カタログ数が揃っていないことには、サービスとしての魅力に欠けるのも事実だ。カタログ数については、レーベル側がどこまで音源を提供するのかに左右される。価格戦略上の事由で、現状のハイレゾ音源をそのままAmazon Miusic HDに移行するかどうかはレーベル側の判断によるからだ。
有料サブスクリプション型の音楽系ストリーミングサービスでは存在感の希薄なアマゾンだが、ハイレゾストリーミングという前人未到のサービスで独自のポジションを築くことができるのだろうか。
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