詳報・リクナビ問題 「内定辞退予測」なぜ始めた? 運営元社長が経緯を告白(1/3 ページ)
「リクナビ」問題に揺れるリクルートキャリアが、8月26日に記者会見を開催。小林大三社長が登壇し、学生の内定辞退率を予測したデータを企業に販売していた件の背景を語った。採用担当者負担を軽減する狙いでリリースしたが、学生への配慮が不足していた他、社内のチェック体制が機能していなかったという。
就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアは8月26日、学生の内定辞退率を本人の十分な同意なしに予測し企業に販売していた件について、事態の経緯と再発防止策を公表した。問題視されているサービス「リクナビDMPフォロー」(4日付で廃止)は研究・開発を目的に企画したもので、いち早く市場に投入し、顧客企業の反応を見ながら改善することを重視したため、社内のチェック体制が機能していなかったという。今後は10月をめどに、リクナビ事業にプライバシー責任者を設置する他、2020年1月をめどに新卒事業の経営体制を変更するなどし、再発を防ぐ方針だ。
リクルートキャリアの小林大三社長は同日、記者会見で「学生への配慮と、社内のガバナンス(企業統治)が不足していた」と不備を認め、「学生や大学、企業関係者の皆さまにご迷惑をおかけしたことを深くおわびする」と謝罪した。
小林社長はリクナビDMPフォローをリリースした目的についても触れ、「売り手市場に伴い、新卒採用の現場で、企業の採用担当者の負荷が加速度的に増していることを考慮した。多くの学生が選考プロセスから抜け、内定辞退者が続出する中で、健全なコミュニケーション(ができる状況)を作りたかった」と語った。
18年3月から提供、19年3月からスキーム変更 「外資就活ドットコム」も関与
リクナビDMPフォローは「19年3月〜7月末にかけて提供された」などと各所で報じられていたが、リクルートキャリアによると、同サービスをリリースしたのは18年3月。仕組みの検討は17年夏頃から始めていたという。
リリース当初は廃止時点の仕様とは異なり、(1)顧客企業から、氏名やメールアドレスを伏せた形で応募者のCookie情報などを提供してもらう、(2)リクナビが保有するCookie情報と突き合わせ、応募者のブラウザを特定する、(3)アクセス履歴を過去のリクナビユーザーのものと照合し、内定辞退率を0.0〜1.0のスコアで算出する――という流れだったとしている。
この手法を採っていた時期は19年2月まで。当時のリクルートキャリアの担当範囲は、ブラウザ情報の照合・分析と、スコアの算出にとどまっており、スコアと氏名のひも付けは顧客企業側で行っていたという。
ただ、この分析手法では、応募者が異なる端末やブラウザを使い分けている場合に動向を追い切れないことから、仕組みの変更を決断。19年3月から(1)顧客企業から、応募者の個人情報(大学・学部・氏名)を提供してもらう、(2)リクナビが保有する情報と照合し、個人を特定する、(3)行動データを過去のリクナビユーザーのものと照合し、内定辞退率のスコアを算出する――という仕様に切り替えたという。
リクルートキャリアは会見で、個人を特定する精度を高めるため、19年3月ごろからハウテレビジョンが運営する就職情報サイト「外資就活ドットコム」と連携し、就活生のWeb閲覧履歴などのデータ提供を受けていたことも明かした。
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